前巻感想はこちら↓
読書感想:黒猫の剣士 ~ブラックなパーティを辞めたらS級冒険者にスカウトされました。今さら「戻ってきて」と言われても「もう遅い」です~ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、お先に説明しておくとこの作品はこの巻で完結である。しかし、決して打ち切りではない。何故ならば、この作品は超速の勢いのままに、一気に最期まで駆け抜けていくからであり。ナインとダリアにとっては、決着をつけるまでに立ち塞がるのは言ってしまえば乗り越えるべき壁に過ぎないからである。
因みにこの作品は、作者であられる妹尾尻尾先生が様々なレーベルで手掛けられている作品と世界観を同じくし、この作品を読んでいると設定の繋がりを感じより面白く感じられるかもしれないので、是非読んでみてほしい次第である。
では、ナインとダリアにとって決着をつけるべき問題とは何であろうか。それは、二人の間の関係と言う鈍感でもどかしい二人にとっては大切なもの。その前に立ち塞がる壁とは何か。それは三つ首の雷竜、ヴァルムント。邪竜の王と呼ばれし強大な竜であり、自らを信奉する信徒たちの元、復活を待つ存在。そしてナインにとっては、密接な意味で「因縁の相手」である。
ダリアと二人でデートしたり、ユージンの結婚を見届けたり。相も変わらず仲間達と賑やかな日々を過ごし、次々と竜達を狩る中。ナインとダリアはお互いに、仲間に背中を蹴り飛ばされるかのように向き合い、お互いの思いを見つめ合っていく。
だがしかし、そこに立ち塞がるのはナインの出生の秘密と些細なすれ違い。誤解と勘違いをしたまま、ダリアを守ると決意したナインは一人、ヴァルムントとの決戦へと向かい。エヌに彼の事を託されたダリアもまた、仲間達と共に駆けつける。
ピエロッタも、ユージンも、リンダも。己が全てを尽くし、死力を越えて力を発揮し。ダリアは仲間達の後押しの元、ヴァルムントへと最大の一撃を叩きつけ。そしてナインは、ダリアと共に全てを終わらせる一撃を放つ。
「あなたが好き。ナインくん」
その果て、辿り着いたのは約束した星の彼方。最後の瞬間、交わすのはやっと向き合った睦言。そして二人は「彼女」の優しい後押しで、皆の元へと帰っていく。
「にゃふんぷす」
だが、足りぬ。彼女もいなければ、望んだ景色には程足りぬ。だからこそ、そんな彼を見かねて彼女も帰還し。ここに最高の結末は完成するのである。
最後まで真っ直ぐ、全速力で面白さのままに駆け抜けていく今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。