さて、「感情のままに行動する」、というのはどこぞのガンダムのパイロットの座右の銘である。だがしかし、現実世界においては感情のままに行動すると言うのは難しい。それは画面の前の読者の皆様も何となくお分かりであろう。社会的規範を求められる時もあり、空気を読む事を求められる時もあり。自分の感情よりも優先すべきものがある時もある。では本当の意味で感情のままに行動するのなら。それはあらゆるものから解放されなければならないのかもしれない。
「ああ、愉しかった。次はもっと、うまくやってやる」
2028年、現代社会に突如として現れた神秘の地、いわゆるダンジョン。そこで探索する者の中でも上位の者として活動していた青年、鳴人。彼はある日、とある事件に巻き込まれ何とか仲間だけは逃がすも自分は致命傷を負い。挙句の果てにはダンジョンの沈降減少に巻き込まれ、遺体も残さずこの世界から消え失せた。
が、しかし。気が付いた時。彼の意識はまるでゲームの中のような世界のダンジョンの中に、奴隷の身分であった。訳も分からぬままに、奴隷仲間の所謂リザードマンのラザールに優しくされ。彼の作ったパンを冒険者が貶した事で三回むかついた事でブチ切れ。スイッチが入ったかのようにあっという間に三人の冒険者を殺し。だがダンジョン内のトラップに二人して巻き込まれた先、力の差を感じる謎の鎧の人物に二人で殺し合えと強要される。
「この場で、俺が殺すべきムカつくヤローは1人だけだ」
が、しかし。ラザールを先に脱出させ。自分の目にしか見えない矢印の指示を無視し、鳴人は鎧の人物を元から身に着けていた権能、「キリヤイバ」で始末し。ウェンフィルバーナと名乗る謎の人物に都市へと転移させられた矢先。彼はとある存在から目を付けられる。
その名はアリス(表紙)。この世界で絶対の存在として崇められる超越種。「蒐集竜」との異名を持つ彼女にツガイとしてロックオンされ。あれよあれよと言う間に彼女の住処まで連れ去られ、気が付けば彼女との婚約が発表されてしまう。
だがそれは同時に、望めばすべてが手に入る絶好の機会。この婚約を断る人間なんてこの世界にはいない筈だった。
「欲望のままに、全てを決めるのは俺だ」
だがそれは鳴人には当てはまらない。何故なら彼はこの世界の人間ではないのだから。誰かに与えられるものはつまらない。全ては己が決めるという強欲。その強欲で彼は己の道を選び。蒐集竜たる自分に集められなかった彼に魅せられたアリスも、彼を本当の意味で墜とすべく動き出す。奇しくもそれは「冒険」のように。
そう、この作品は正しく無軌道である。己が心のままにメインシナリオすらも踏み躙る、傲慢で強欲が溢れている。しかし、だからこそ。一種の爽快感があるのも確かなのである。
爽快感もあるファンタジーを読んでみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
現代ダンジョンライフの続きは異世界オープンワールドで!① (オーバーラップ文庫) | しば犬部隊, ひろせ |本 | 通販 | Amazon