読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々6

f:id:yuukimasiro:20210905225853j:plain

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前回で第一部完、オールスターバトルと言わんばかりに今までコマリが関わってきた少女達が集い繰り広げられた大決戦。第一部完である。つまりこの巻から第二部が始まるのである。そして様々な作品で、基本的に新たな部への導入というものは、何だかんだと穏やかな展開になる事が多い。

 

 

では、この作品でそんな穏やかほのぼの、コメディちっくな展開になるのであろうか。画面の前の読者の皆様ももう既にお察しなのではないだろうか。その想像は恐らく間違っていない。何度でも復活できるからこそ命が軽いこの作品の世界観において。命が絡まぬコメディがあり得る訳が無いのである。

 

核領域、かつて決戦の場となった古城。そこに集うコマリに魅了された少女達。彼女達がコマリに内緒で、ひっそりと計画している事があった。その計画とは何かと言うと、パーティである。丁度折しも、もうすぐに迫ってきているコマリの誕生日。吸血鬼にとって一人前と認められる、十六歳の誕生日である。

 

「お―――恐れながらっ! 私に考えがありますっ!」

 

 それぞれ自分の国にコマリを招こうと喧々諤々、結局戦争で相争うとする少女達。そんな彼女達を制する影が一つ。その影の主はエステル(表紙左)。軍学校を首席で卒業し、コマリの率いる部隊を志望し配属されてきた少女である。

 

皆様ご存じの通り、コマリの部隊とは殺人鬼を始めとした問題児共の巣窟であり、力こそが全てを決める、正に世紀末的環境である。そんな中に放り込まれ、挙句の果てに特殊班を率いる事を求められ。学校を卒業したばかりの新人にそんな大役が果たして務まるのか。

 

「私に殺人の許可をください! そうすれば特殊班の皆と分かり合える気がするんです!」

 

 しかし、そんな心配の必要は皆無。解き放たれたエステルの力は、問題児共に劣る事は無く。真面目の枷を解き放ちあっという間に認められた、貴重な常識人枠である彼女の提案により、誕生日会はエステルの故郷である温泉地で行われる事になる。

 

エステルの心の中、秘められていた思い。心の病に見舞われ床に伏せる彼女にコマリを会わせたいという一つの願い。

 

 しかし、少女達の集う温泉地で待っているのは決して平穏なだけの展開ではない。エステルの妹、モニクのみが見える「影」。街の上空に浮かぶ「蜃気楼の街」。そして、クローズドサークルと化した旅館で巻き起こる殺人事件。

 

 

犯人はすぐ側にいる、すぐ側でコマリを狙い、同時に己が研究のためにモニクに魔手を伸ばしてくる。

 

「おまえはくいあらためるべきだ」

 

 それを許すコマリである訳もなく。今度はモニクの血を媒介とし目覚める烈核解放。だが、水面下に悪意は揺らめいている。そして悪意が傍にいる限り、コマリの受難は終わらない。

 

だけど、それでも止まらない。一瞬の邂逅、そこで知った母の思いと彼女が戦う敵の正体。新たな理由が出来たからこそ、自分の在り方は変えられぬ。

 

 

前巻とは違いどこかドタバタ感のある中に、新しい展開への期待を高める仕掛けが施される今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ひきこまり吸血姫の悶々6 (GA文庫) | 小林湖底, りいちゅ |本 | 通販 | Amazon