読書感想:恋は夜空をわたって2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:恋は夜空をわたって - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、もどかしくてこそばゆくて、もだもだしながらも甘々で。結局既に両想いなのは確定な壮一と咲の関係性であるが、画面の前の読者の皆様は果たしてここから拗れるのか、と疑問に思われたりするだろうか。答えを先に言ってしまうのならば、彼等、ここから拗れてしまう。主に咲の側からの行動により。だがそれもまた青春。もどかしい、君と歩む回り道もアオハルなのである。

 

 

「俺もマジでわかんねぇんだ」

 

「これからわたしたち、どうなるんだろう・・・・・・」

 

保留にしていた告白に応える決心がついて、改めて壮一から告げられた告白の言葉。だが、何故かそれを咲はフッてしまい、二人の間には気まずさともまた違う、宙ぶらりんな気持ちが蟠る。何故フッてしまったのか、その理由が分かれば簡単であろう。だが、張本人である咲はその思いを言語化することは出来ず。言葉にならぬからこそ、電波に乗せても伝わらなくて二人はどこかぎこちなくなってしまう。

 

「わたしも・・・・・・一肌脱いでやりますか」

 

いつもの配信でも精彩を欠き始めた咲を見ていられず、動くことを決める壮一。その彼を見、妹である二胡もまた二人の背を押す為に動き出す。咲とコラボ配信をし、更には二人の秘密のファンコミュニティのURLを送り付け。壮一には内緒で覗いたそこで垣間見るのは、壮一の飾らぬ本音と、きちんと「配信者」であるという事。咲とは違い、ファンたちと阿吽の呼吸でまるで漫才のようなやり取りを繰り広げながらも、慕われているその姿。

 

「わたしが―――先輩に釣り合わないんだよ」

 

その姿に、言葉になるのはフッてしまった理由。それは自分が釣り合わないから。類まれなる努力の果てに、音楽で沢山の人を幸せにしている。だが自分はどうか。まだ迷ってばかりで、恋に悩みいつも自分のラジオにお便りを送ってくれている一人のリスナーすら助けてあげられぬ。

 

その背を再び押すのは、壮一の新曲。彼が過ごした景色の中から生み出された、ちょっと切ないその曲が。彼女の中で、リスナーへの返事の像を導き出していく。

 

『でも、本当は別の道があると思うんです』

 

その答えを胸に配信に向かい合い、咲は優しく、延命を打ち切るその答えを届ける。リスナーと共に自分も進む為に。前へと歩いていく為に。その願いを込めて、電波に乗せてその思いを届ける。

 

「好きです。付き合ってください」

 

 ずっと待たせてしまった。けれどやっと今、並べた。スタンドバイユー、貴方の隣で。とーんと恋におっこちきっているのなら、最後はいっそ軽く、日常の延長のように。呆気なくも優しく、新たな日常の扉は開く。

 

追いついただけではなく、更に高め合う。お互いに引っ張り合っていく。二人の世界を包むのは新たな環境。その主は、二人で一人だったあの彼女。

 

果たして新しい日々、その先に待つものは。

 

更に真っ直ぐに甘く、恋に軽やかに染まっていく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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