読書感想:恋は夜空をわたって

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は例えばラジオ形式の配信は聞かれるであろうか。私は時々、東海オンエアのメンバーである虫眼鏡様の配信を聞くくらいであるが、皆様は推しの配信というものはお持ちであろうか。

 

 

例えばyoutubeの配信であれば、配信の形態にもよるが相手の顔は見えず、声だけが聞こえてくると言う場合も多い。そのような場合は、電波の海に乗せて、画面越しの交流となるのは画面の前の読者の皆様もご存じのはずである。

 

 ではもし、そんな画面越しの相手の正体が分かっていたとしたら。相手の気持ちまでもが分かってしまうような関係性であったとしたら。皆様はどうされるであろうか。

 

特に特筆する条項もない、ごく普通の少年、壮一。そんな彼には最近、一つの悩みがあった。それは図書委員の活動を通じて知り合った後輩、咲(表紙)の塩対応。同じ曜日の担当として仲良くなりたいけれど、いまいち距離を詰め切れず。もどかしさの積もる日々。

 

『―――せっかく、一緒に帰れそうだったんだけどなあ・・・・・・』

 

 そんな中、ふと偶々選んだ縁もゆかりもない配信。その主が咲であると気付いた壮一は、実は彼女が自分の事を好きらしいと言う本音を盗み聞きしてしまう。

 

一体それは本当なのか。聞いてみたいけれど、直接は聞けず。最後の一線を越えられぬ恐る恐るな問いかけをしてしまう壮一。

 

しかし、そんな問いかけを受けた咲はまさか既に疑惑を抱かれているとは気付かず、彼の問いかけに心を揺らし。思わずムキになって否定してしまい、こちらも恐る恐る彼の真意を探ろうとする。

 

学校では、もどかしくも可愛らしい探り合い合戦を繰り広げ。夜、ネットの電波の海越しに咲のリスナーへの報告を聞き、更に悶えていく。

 

デートを経て、核心に近づき。ぐいぐい行こうとして、壮一に思わず拒まれてしまい心が折れてヘタレそうになって。

 

そんな彼女へ壮一は、自分だけの解決方法を届ける。それは今まで彼が隠していた、彼女には言えなかった秘密。彼女を見習うように、電波に乗せて、電子の海越しに届ける恋の歌。

 

「・・・・・・好きです。先輩のこと」

 

想い届けて向かい合い、咲が届けるのは自分の気持ち。

 

「そのときまで・・・・・・こんな関係のわたしたちでいましょう」

 

そして選ぶ、二人の答え。今は未だ、恋とは分からぬから。だから、今はこのままで。心結ばれたこのままで。

 

 もどかしくこそばゆく、もだもだしながらも甘く温かく。青臭くて瑞々しい、正に青春、正にアオハル。まるでタルトのように様々な色の輝きに溢れた、真っ直ぐな青春がこの作品にはある。

 

 

その青春があまりにも綺麗で、だからこそ。こんなにも心を打たれるのかもしれない。

 

王道ど真ん中、ドストレートな青春を楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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