読書感想:小説が書けないアイツに書かせる方法

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は、作家の方々は何故スランプと言うものに陥られると思われるであろうか。その答えは千差万別であり、明確な答えは無いはずなので私も何とも言えない。だがしかし、スランプと言う物はきっと、辛いもののはずである。

 

 

家ではイケてる姉と妹に貞操を狙われ、学校では気の置けぬ友人に冗談交じりに貞操を狙われ。一体全体、どうしてそうなった?と聞きたいほどに、ぶっ飛んだ環境の中にいる少年、雫(表紙左)。彼は主に自身の勃起不全に対する悩みと、ぶっ飛んだ姉妹達を描いた小説、「砂漠に降る霧雨」でとある文庫で新人賞を受賞するも、次回作を書けずに悩み、没作品を量産しながらも頼りにならぬ担当編集と打ち合わせを重ねていた。

 

「そう、これはお願いじゃない。・・・・・・脅迫です。月野シズク先生」

 

そんなある日、唐突に彼の前に嵐が如き女が来る。その名は琥珀(表紙右)。初対面でありながら何故か彼の事を知っている彼女は、自分の考えた小説を書け、さもなくば正体をばらすと脅迫を突き付け。訳も分からぬままに雫は脅迫を飲まされてしまうのである。

 

作業場としてアパートを借り、更には体験からしか出力できぬ雫に色仕掛けかと言わんばかりの参考資料を実地で突き付け。しかし出されるプロットは荒唐無稽。だがそんな無茶苦茶なものが何故か、彼の股座のアレを勃起させていく。

 

しかし、順調に見えた創作はある日突然、琥珀の違うと言う発言から崩れ去る。自分の事を表に出したくないと頑なに拒み、それどころか原稿に感覚のままに否を突き付け。訳も分からぬが与えられるのはストレスばかり、それが続けば当たり前に二人はすれ違い。創作の時間は失われてしまう。

 

「一緒に頑張ろ?」

 

 何故彼女はそんな態度を取ったのか。その秘密を探る雫は、編集部を通じ真実を知る。彼女もまた、自身と同じ新人賞の生まれであり、彼女もまた書けなくなった作家だと。そして彼女の作品は、自分をこれまでで一番勃起させる、それどころかその先まで導く。その事実を物的証拠として突き付け、今度は彼が彼女に脅迫を突き付ける。「小説が書けないアイツ」に書け、と容赦なく創作の沼へと叩き落とす。

 

時にぶつかり合い、時に逃げる彼女を容赦なく捕まえて。ある時は友人達に協力を仰ぎ琥珀をおびき出し、またある時は編集部をまるでデスマーチが如く動かし、準備を整える。

 

その果てに生まれるのは何か。それは空前絶後の話題作。小説が書けないアイツだからこそ書けた、新たな神作品なのである。

 

正に創作についての論理が、エロティックかつある意味暴力的に繰り出されるこの作品。衝撃を受けてみたい読者様は是非に。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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