読書感想:となりの悪の大幹部!

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は、「矢的猛」という男をご存じであろうか。ご存じの読者様は多分特撮ファンである。簡単に言うなれば彼は、昭和ウルトラマンの一人、ウルトラマン80の変身者であり、教師としての最終回は、かの有名なウルトラマンウルトラマンメビウスの中の「思い出の先生」という回で行われた、という人物である。

 

 

という話題とこの作品は何が関係あるのかと言うと。かの矢的猛は、中学校の教師と地球防衛隊の隊員を兼務していた訳であるが、この作品の主人公であるミドリ(表紙左)も同じように、高校の歴史の非常勤講師と、世界を守る戦隊、「万色戦隊バンショクジャー」のグリーンを兼任しているのである。

 

(残業決定、と)

 

 だがしかし、そんな生活はブラック企業もかくやという激務であるのは何となくお察しではないだろうか。戦隊内に二組カップルがいるからあぶれ、世間からは地味と言われながらも戦隊内ではブースト役の為中々休みを貰えず。荒み続けていた私生活が、お隣に越してきた妙齢の美女、アシェラ―(表紙右)と、その娘であるタラタット(表紙中央)との出会いにより変わり始める。

 

何故かお弁当を作ってくれたり、疲れ果ててぶっ倒れた所を介抱してもらったり。ある時は偶発的に発生した逢瀬もどきをタラタットに見られて赤面したり。だがある日、ひょんな事から彼女達が自分達が負かした悪の組織、「クリアード」の元首領と大幹部であった、という事実が判明してしまう。

 

「分かった。第四の選択肢だ」

 

 だがしかし、自分に好意を向けてくれる彼女達を切り捨てるような心はもう、簡単には抱くことは出来ず。既に力を失っている彼女達を殺す事もない、とミドリは引き続き監視の意味も込め隣人として関わることを決める。

 

だが彼の前、新たに現れた敵達、クリアードの残党の攻勢は苛烈さを増していく。ミドリのブーストが無ければ攻撃は通らず、一瞬の不在を突かれてリーダーであるレッドが負傷してしまい。現状を変える為、二人の協力を仰ぎ。アシェラ―の大胆な告白もあり、何とかバンショクジャー本部に受け入れられる事に成功する。

 

その目の前、巻き起こる敵の大侵攻。戦隊に付き物の巨大ロボは修理中、レッドは病み上がりの絶不調。正に絶体絶命の状況の中、アシェラ―とタラタットは、封印をぶち破って駆け付ける。

 

「いやーここまでこじらせとったとはのう」

 

 それはタラタットがアシェラ―を大切に思うからこそ、その思いに賭けて、その思いを強化したから。だがその思いは何処かヤバい方にいき、戦慄とちぐはぐながらも共同戦線の幕は上がる。

 

全員の力を合わせ、巨大怪人と巨大剣のコラボと言うまるで夢のようなシチュエーションで戦う激突、その勝敗を分けるのは何か。それは「愛」、そして「信じる心」なのである。

 

何処か締まらぬコメディながらも、根底には熱いものがある今作品。笑えて心燃やしたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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