読書感想:アマルガム・ハウンド2 捜査局刑事部特捜班

 

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読書感想:アマルガム・ハウンド 捜査局刑事部特捜班 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻でテオとイレヴンは確かな相棒同士としての絆を結び、バディとして本格的に始動を開始した訳であるが、そんな彼等の前には一体今巻ではどんな事件が立ち塞がるのか。その答えはもう、敢えて明言せずともわかるであろう。また、アマルガム関係の事件が彼等の前には立ち塞がるのである。

 

 

 

「この事件、たちが悪すぎる」

 

前巻の騒動後、本格的な修復作業に担ぎ込まれたイレヴンが復帰し訪れる夏。養子縁組の詐欺を行うちんけな悪人を追う、それだけの仕事の中で詐欺師の共犯である一組の夫婦が、まるで前巻でアマルガムが起こした事件のような形で死を迎え。詐欺師の言葉から寧ろ夫婦の方に裏の顔が疑われ。その家に調査に向かったところで発見したのは、家の近くの海岸で力尽きていた小型アマルガムの残骸と、「代替身体」というものを「ジクノカグ」という団体と取引した、という記録。

 

「厄介なことだ。急いで確認しよう」

 

 その団体のマークと似ている、中立の島国で英雄と呼ばれる組織に尋ねてみると、その団体は下部組織であり、どうも本部の思惑を外れ暴走しているらしい、というきな臭い事態へ突き進む。民間の薬師、更には団体の事務所という糸を辿って手繰り寄せたのは、どうも黒幕は船上パーティーも行われる客船に乗り込み、ツアーの中で獲物を見定めているらしいと言う事実。

 

イレヴンの古巣である諜報部に協力を仰ぎ、テオとイレヴンは客として、トビアスはスタッフとして。気になることがある為地上に残り支援に残ったエマを残し、三人での捜索が幕を開ける。

 

いつもとは装いもキャラも変えたイレヴンに振り回されながらも進む捜索。地上と海上、二つの場所でそれぞれの役目を果たし、進んでいく捜査。その中で見えていくのは、団体が謳う人体蘇生、聞いただけなら夢のある行為の裏側に隠れているアマルガムの影。大元である母体として、海中から指示を発信し、ただ生み出しているものの影。

 

少しずつ状況を固め追い詰めながらも、民間人のとある行動で不意に状況は混乱へ陥り、大混乱の中で母体である巨大アマルガムとの激突と、黒幕との追走劇へと場面は移り変わる。

 

「あなた、まだ人の役に立ちますか」

 

 その事態を解決する為、母体の巨大アマルガムへと接触したイレヴンが垣間見た記憶。それは役目を間違えながらも、それでも止まれなかった思い。捕食を通じて人間を学び過ぎたからこそ間違えたアマルガムの、いわば「思い」。

 

アマルガムにとっては人間を区別するのは難しい、けれどそれでも人間は守るべきもの。その原則に基づき行動した、それは決して責められるべき行為ではないのである。こうしてアマルガムは救いを得、新たな仕事へと割り振られる。

 

前巻の事件と対照的な事件の中、また一つ絆を結ぶ今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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