読書感想:友人に500円貸したら借金のカタに妹をよこしてきたのだけれど、俺は一体どうすればいいんだろう3

 

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読書感想:友人に500円貸したら借金のカタに妹をよこしてきたのだけれど、俺は一体どうすればいいんだろう2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

朝が来て、昼になって、夜になる。この作品の表紙の時間の移り変わりを見てみれば、時間変化は画面の前の読者の皆様もお察しであろう。そして一日が過ぎて、また新たな一日が来て。そしてそれが積み重なるとはどういうことか。それ即ち、求と朱莉が一緒に入れる時間が残り僅かになってきていると言う事である。

 

 

『求くんってさ、朱莉のこと好きでしょ』

 

「俺は、朱莉ちゃんが好きだ」

 

みのりとの電話の中、朱莉への思いを聞かれ。何の立場も関係なく、自分の側に居てくれる彼女への思いを見つめ直し。ようやっと彼も、朱莉への思いを自覚する。押しかけ攻勢の片思いが、もどかしくてこそばゆい両想いとなるのである。

 

 だがしかしそれはどういう事か。簡単な事である。恋心を伴わず接してきた関係が、恋心を伴った事でぎこちなくなる。ちょっともどかしい事になっていくのである。

 

残された期間は三日間ほど。その中でテストを頑張った朱莉が頭をなでてもらったり。またある時は、始まりの代金となったお金と同等のお金で買えるちょっと豪勢なお肉を買って調理したり。これで終わりだからと、二人で後悔しないように。日々を積み重ねる中、巡ってくるのは結愛から齎された夏祭りの情報。2人きりでいっておいで、と浴衣を着てちょっとだけ特別な服装で夏祭りへと繰り出していく。

 

 金魚すくいで一喜一憂したり、りんご飴を二人でシェアしたり。何気ない、けれど確かに甘い時間を過ごす中。朱莉の中に浮かぶもやもや。この時間が終わると言うことは分かっている、けれど終わらないで欲しい。今日が終わればもうお別れ、だからこそこの時間が永遠であればいいのに、と。

 

「俺・・・・・・朱莉ちゃんのことが好きだ」

 

けれどそんなことは無く、言えぬ思いは溶けそうになり、自分への嫌悪感が身を傷つけて。そんな彼女を受け止めて、嫌だったら突き放してと前置きして。求は真っ直ぐに想いを伝える。彼女が望んでいた言葉を、彼女がしてほしかったことを届ける。

 

彼じゃなきゃダメ、それは永遠に変わらない。終わりにしたくない、だったら勇気を出すしかない。勇気を出して溢れんばかりの思いを口にして。そして二人の関係は結実を迎える。魔法が解けても尚続く、新しい関係が始まっていく。

 

「なんにせよ、避けては通れないしな」

 

 だからこそ、離れるとしてももう大丈夫。半年後の約束、それを交わして二人は分かれ。そして求は駆けだしていく。望んだ未来を叶える為に。

 

確かな結実、その甘さ。その先にあるであろう弾けるような恋の日々。それをもう少しだけ拝んでみたい。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

友人に500円貸したら借金のカタに妹をよこしてきたのだけれど、俺は一体どうすればいいんだろう3 (ファミ通文庫) | としぞう, 雪子 |本 | 通販 | Amazon