さて、結婚しても離婚するという夫婦は一定数いる訳であり、その理由は価値観の相違、不倫問題等多岐にわたる訳であるが、そも価値観の相違というのは、結婚する前に何とかできないのか、と聞きたくなる読者様もおられるかもしれない。だがそれも仕方のない事かもしれない。結婚前からそこまで深くつながり合っている、という事態も中々ないであろうし、結婚しないと見えてこないもの、というのも確かに存在するはずなので。
とある世界を東西に二分する大国。東の人体を改造する技術を持った軍事国家、フェデン。西の超能力を用いる国、ウェギス。二つの国の激突を終わらせたのは、二人の英雄であった。
「きみら二人の立場はね、特別なんだ。世間から注目を浴びすぎている」
その英雄である、フェデンの英雄であるアルマ(表紙左)、ウェギスの英雄であるエリーゼ(表紙右)。戦いの中、ぶつかり合う中で愛が芽生え。戦場のロマンスという大恋愛の末に結婚し、平和の象徴として祭り上げられた二人。が、しかし。二人はとある小さな事件から考え方の違いが露呈し、離婚の危機に陥っていた。
個人より全体であるアルマ、誰一人として見逃したくないエリーゼ。見ているものは同じに見えても、持っている力が違うからこそそこは分かり合えぬのか。だが勿論、二人が離婚する事になればまた大国間に緊張が走るのは明白であり。何とか離婚をとどまってくれと国のトップに縋りつかれる中、フェデンからオリビア、ウェギスからロキという軍人の護衛兼監視役が派遣され。気が付けば2人を復縁させる作戦が発動される。
あれよあれよと言う間に、オリビアとロキが家に同居する事になり、各々相手の事を嫌がりつつもそのやり取りは、どこか仲の良さを感じさせるものであり。そんな中、それぞれ受けた指名手配犯の捕獲作戦の中、アルマは気づきかけていく。どこかに道があるのではないか、と。相手を理解する、その余地はどこかに残っているのではないかと。
しかし状況はいきなり流転を始めていく。「灰の部隊」と呼ばれるレジスタンス組織が二人の暗殺を計画しているという情報がリークされ、暗殺対象を晒すわけにはいかぬと、二人には待機が命令されるも、「灰の部隊」に討伐部隊は嵌められ、本隊が彼等に襲い来る。
「いや、実現させるんだ」
戦いの中、判明する身近にいた裏切り者の存在。だがそんな存在すらも助けたいとエリーゼは手を伸ばし。その姿に答えを見出し、隣に並んだアルマはエリーゼに提案する。お互いの主義を譲らず、二人ですり合わせる事を。凸凹な理想を重ね合わせ、全てを救って見せる事を。
それは途方もない困難を伴うかもしれない。だがそれは、二人でならばできると信じられる選択肢。その答えは二人の絆を取り戻し。あっという間にラブのままに息を合わせた二人は、圧倒的な力を見せつけていくのである。
異色な状況から始まる中に、相互理解という芯が通っているこの作品。変化球から王道に変化していく、その面白さが魅力なのである。
ちょっと違ったラブコメが読んでみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。