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読書感想:尽くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか? - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を楽しまれた読者様であればもうご存じであろうが、この作品の主人公の湊人とヒロインのりこ。この二人は既に結婚している。そして言わば、両片思いと言っても差し支えないもどかしい二人である。では、言わば「契約結婚」という器が既に出来ている状態の二人に足りないものは何であろうか? その答えはきっと簡単、只一つ。「愛」という、器を満たす只一つの奔流である。
そんな二人をある意味で後押しするかのように、唐突に厄介事が風のようにやってくる。
それは、校内新聞による二人の熱愛のスクープ。唐突な露呈により、二人の関係は(ある意味で)公になってしまったのである。
「・・・・・・ねえ、りこ。いっそ付き合ってるってことにしちゃうってのはどうかな?」
結婚のことまで晒されるのは非常にまずい。それを隠すという意味でも、湊人からもたらされたいっそ恋人同士として振る舞うという提案。
それは、新たな関係性へのステップアップの呼び水。家だけではなく、学校においてもいちゃつける大義名分を得たりこが止まる訳はない。
「うん。私が湊人くんを大好きで、告白したの。だからね、私、今すっごく幸せなんだぁ」
級友達に問い詰められ、まるで夢見る乙女かのようにふんわりと、だが確かに幸せ一杯の様子でのろけてみせて。
「湊人くん、今日はこのまま恋人っぽく帰ろ?」
誰が見ているかも分からないと言う名目の元、恋人らしく手を繋いで帰ったり。
秘密の「夫婦」だけではなく、「恋人同士」。確かに変わった関係は角度の違う甘さを齎し、湊人を少しずつ、りこの隣に立てるようにと背を押していく。
幸せにするためとお金を株で増やしていたり、一挙手一投足から目が離せなかったり。
幸せに溺れるかのような日々の中、隣に並び立つに相応しい存在となりたい。過去を越えつつある湊人は思い出す、かつて幼き頃、りこと同じ時を過ごしていた記憶を。
始まりは同じ、而して一部記憶は食い違い。けれど、確証も自信もないけれど。それでも自分だって好きになった。想いに応えたいと、願う事が出来た。
「ねえ、湊人くん。この虹も、今日の奇跡も、私一生忘れないよ」
だからこそ、リベンジの初デート。雨上がりの奇跡のように架かった虹が見守る中で臆病を越えてその一歩を。越えて二人の心は結ばれる。器に中身が満ちた時、二人の関係は真の意味で完成するのである。
夫婦だけではなく恋人として。時にデートしたり、プレ新婚旅行に出かけたり。愛も恋も深まり、また一歩、夫婦を越えた夫婦になっていく。だからこそこの作品は甘い、そして面白いのだ。
何気ない日々の中の甘さが好きな読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
尽くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか?2 (GA文庫) | 斧名田マニマニ, あやみ |本 | 通販 | Amazon