読書感想:最強にウザい彼女の、明日から使えるマウント教室

 

 さて、画面の前の読者の皆様の中にはマウントなんてものを行われるような方はいないとして、皆様はマウントを取られた事はあるであろうか。聞いていると苛々するマウント、しかしそれは一種の自分を大きく見せる行動でありよくよく聞いてみると案外くだらないものである、という事も多いので皆様は気にしない方が吉である。という前置きはさておき、今作品においては「マウント」が重要なものであり、マウントが全てを決めるのである。何を言っているのか分からないと思われるがとりあえずそういう事である。

 

 

物語の舞台となる私立鷺ノ宮学園。日本一の大企業により創られ上流階級の子女たちが通うこの学園は、学園長の(私怨含む)方針により、独自の評価制度により全てを決めてきた。

 

 その名も「優劣比較決闘戦」。感情の流れを測定できる装置、「天秤時計」で数値を図りマウントにより数値を削り合うという、どこぞの決闘盤を用いた決闘のようなシステム。入学式も早々、クラスを決める為の三日間の戦いが始まる中。頂点に立った者が得られる特典に釣られ入学しただけの一般人、零は困り果てていた。そこに声を掛ける少女が一人。メインヒロインであり社交界の音に聞こえた残念令嬢、千里(表紙)である。

 

「単刀直入に言うわ。私の彼氏になって」

「嫌です」

 

息をするようにウザい、そんな彼女はライバルである少女、環奈に勝つための幸せマウントをする為に零に目を付け。そのウザさに辟易しながらも、彼女から取引を持ち掛けられ期間限定の恋人関係となり、マウントでの戦の中に臨む。

 

「戦う理由」を見つける様に、という宿題を出されまずは陣営を作る中、気弱な元読モ、翼や内閣官房長官の息子、響一を味方につけ。目があったら0秒でバトルと言わんばかりにどこでも巻き起こるバトルの中を千里の策略を用いて切り抜けていく零達。逃げただけでポイント半減、なんとか目的の一歩に辿り着き、環奈との決戦を控えた中。零は千里の作戦により勝ちを譲られ、決戦の場へと放り出される。

 

 戦いの場に立ったのならば、同じ土俵。だがマウントを繰り出すのは決して千里を悪く言われたからではない。寧ろ彼女だけは絶対に無理である。その胸に生まれた戦う理由が背を押す。皆違って皆いい、この場所だからこそ見つけられた理由を貫く為、零は必殺の一撃を放つ。

 

「おっぱい」

 

それは持たざる者への最大級の皮肉。持つ者だけが出来る、何処にでもありふれているからこそ最強のマウント。

 

この作品、言うなれば下らないと言ってしまう読者様もおられるだろう。卓越した頭脳を何に使っているんだと呆れる読者様もいるかもしれない。

 

だがそれでいい、それがいい。正におもちゃ箱をひっくり返したかのように。マウントに関する様々な知識も学べる中、一瞬しかない青春をマウントに賭けた個性の塊な子供達がまるでスクランブルと言わんばかりに、ごちゃまぜになりながら駆け抜けていく。

 

だからこそ面白い。この作品を読了した時、何も残らぬ人もいるかもしれない。だが繰り出されるドタバタコメディに少しでも笑いを残されていたら。それはきっと彼等に負け魅了されている事になる筈なのだ。

 

今、笑いたい、元気になりたい読者様は是非に。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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