前巻感想はこちら↓
読書感想:娘のままじゃ、お嫁さんになれない! - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、「冒険」とは大人になるにつれて行わなくなってくるものである、というのは前巻の感想で私が語った事である。では大人になるにつれて失われるものが他にもあるとしたら、皆様は何を上げられるであろうか。その答えは胸に秘めていただくとして、今巻で繰り広げられる物語を見届けていただきたい。その答え合わせをしてほしい次第である。
「私の夢は、あなたのお嫁さんになることよ」
相も変わらず続く桜人と藍良の同居生活。ぬいぐるみに隠したビールの空き缶を藍良に見つけられて休肝日を増やされかけたり。そんな中、藍良が語るのは自分だけの秘宝。それは桜人との結婚。その秘宝を掴み取る為に必要なのは、藍良が国籍を得る事。
そのための試行錯誤も続く中、藍良は少しずつ学校に馴染んでいく。友人となってくれた元カノの妹、流梨を居所として少しずつ世界を広げていく。その広がりが心に余裕を齎すのか。藍良のぐいぐいとくるアプローチが徐々に加速を始めていく。
眠れぬ桜人に添い寝という悪戯を仕掛けて来たり。更には元カノである祭里が家庭訪問をしてきて、彼女と桜人との関係に嫉妬をみせたり。桜人の言葉で一喜一憂し、ころころと表情を変える。そんな彼女に、少しずつ目を奪われる事が増えていく。
大切なのは周りを見る事。きちんと周りを見て、頼る事。今までは心の中には祭里がいた。でも今は、藍良の思いが、温もりが確かに心の中に息づいている。年頃で、けれど子供だからこそ真っ直ぐである彼女からのアプローチが桜人の心を揺らしていく。
「私、言ったじゃない。たとえ親だって、子どもに頼っていいんだって」
彼女と共にいつか冒険に出る為に。その為の前哨戦として黄金週間の中で二人でキャンプに挑む中。暗所恐怖症を克服する為に努力し、けれど何かが足りなくて雨の中で打ちひしがれて。そんな彼へと藍良は寄り添い、彼と同じ苦悩を背負おうとする。傷つくことを恐れずに、真っ直ぐに彼へとぶつかってくる。
その中で気付く、桜人の中に足りなかったもの。それは「熱」。夢をかなえるための情熱、何もかもと戦うための勇気。大人になる中で忘れていく子供だからこその無鉄砲。だからこそ、藍良と桜人は二人で一つ。二人だからこそ補い合える、埋め合えるのだ。
同じ夢を見れる、何度でも。彼女と一緒なら。まだまだ彼等の人生は続く。そんな中での家族の温かさと恋の甘さが前巻にも増して深まる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。