読書感想:嘘と詐欺と異能学園3

 

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読書感想:嘘と詐欺と異能学園2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今までジンとニーナは所謂格下、自分とは同格以上都の敵とは騙し合いを繰り広げていない訳であるが、いつから錯覚していたのだろうか。ジンよりも権謀術数に長け更には強力な異能すらも備えた、正に上位互換と言わんばかりの敵が現れないなんて。最終巻となる今巻で現れるその敵の名はハイネ(表紙上)。ニーナの実兄であり、ジンの師匠、ラスティを殺した憎むべき相手である。

 

 

「原初の果実」、「楽園の建設者」。前巻で齎された二つの単語の意味を共犯者たちと共に考察する中、学園の教師として赴任してきたハイネは、衝撃的なルールを学園に付け加える。

 

 それは停滞した学園の状況に、これでもかと冷や水を浴びせるようなもの。賭けるポイントの強制、決闘の強制、更には拒否権のはく奪。更には学園の治安を維持し他国の間諜を炙り出すと言う名目で自警団を結成し、ジンとニーナを招き。学園を生徒達が疑い合うディストピアへと変え、全てを支配せんと振り回していく。

 

「そういう嘘を使って、きみたちは怪物と戦ってきたのかな?」

 

「だってきみは、本当は特異能力者なんかじゃないんだから」

 

ジンとニーナの秘密を見破り、彼等を罠の中へと誘い込み。帝国の最終計画も始まろうとし時間が無くなっていく中、ハイネの策に後塵を拝すしかなく。味方もまた彼の能力の前に倒され、ジンとニーナの手札は着実に奪われていく。

 

「これなら、あの怪物を地獄に叩き堕とせる」

 

 だが、決してニーナは諦めていない。彼女が初めて発したジンへの献策。それがジンの策略と合わさり、全てを覆す為の一世一代の最後の詐欺が幕を開ける。

 

「二択の賭けに負けたから、あんたはそこで押し潰されている」

 

炎に包まれる学園で、躍動するジンの協力者達。その援護を受け、ジンとニーナはハイネと対峙する。敵は正しく格上、及ぶべくもない筈の相手に対抗する力はどこにあるのか。その一つは、ハイネが気付かなかった、ニーナの力の本質。

 

そしてもう一つは、ジンの最後の賭け。得体の知れぬ「楽園の建設者」の思惑に賭けた、己の直感頼みの一流の詐欺師以外には決してできぬ、詐欺師だからこその命を賭けた強み。

 

「これからも俺と一緒に、次の大仕事に挑むんだ」

 

だが、これで終わりではない。燃え盛る学園を背に、ジンとニーナは次の大仕事へと乗り出していく。今回の仕事が比べ物にもならぬ程の、当てもない大仕事へと。

 

最後まで状況が二転三転する、今までで一番の緊張感とひりつきが味わえる今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。