読書感想:創成魔法の再現者3 魔法学園の聖女様 〈上〉

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:創成魔法の再現者2 無才の少年と空の魔女 〈下〉 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で歪みの一つを正す事には成功すれど、まだエルメス達の戦いは始まったばかりに過ぎず。この国に蔓延している歪んだ価値観を正していくには、まずは何処を正していけばいいか。それ即ち「教育」。まずは歪んだ価値観を育てる場所を是正し、未来の歪んでいない芽を育てる事こそが重要。と言う訳でカティアの従者としてエルメスがカティア達貴族の子息たちが通う王立魔法学園へ入学するのが今巻なのである。

 

 

「・・・・・・本音はね、怖いんだよ」

 

が、しかし。やはりそんな場所へ、しかもアスターの失脚により権力構造が激変している空間へエルメスを投げ込めば、どんな混乱が起きるかは明白であろう。混乱を防ぐため、かつエルメスを迫害から守る為に。ユルゲンの願いによりエルメスは「原初の碑文」の本質を隠し入学し、更には家格が良く素養や技術が問題のないAクラスに転属になったカティアと離れ、問題児揃いのBクラスに入学することになってしまう。

 

 Bクラスで出会うのは、カティアの友人であり特殊技能の持ち主であるニィナ(表紙左)や二つの血統魔法を持ち「聖女」と呼ばれるサラ、彼を目の敵にしてくるアルバートといった個性的な仲間達。彼等と接し時にぶつかり合い、時に友誼を結び。エルメスはこのクラスに蔓延している問題を見つめていく。

 

それは無力感と厭世観。ロクな教えも受けられず、合同授業ではAクラスに蹂躙されるだけ。そんな日々が続いているからこそ、どこか諦めたような差別されている側の空気。

 

「―――悔しいとは、思わないんですか?」

 

 だがしかし、彼等の中にも磨けば光る才能の原石が眠っている。そして彼等は、まだ見捨てる段階ではない。心折れかけた中、くすぶり続ける怒りの感情がある。それが見えたのならば、あとは好機を与えるだけ。来るべき舞台は二週間後の学園祭。そこに向けて、エルメスはBクラスの面々に鬼のような指導を施していく。

 

「特訓してきましたから、貴方たちより」

 

それぞれの適性に合った指導に必死で食らいつき、エルメスの元で彼等はその才能を開花させていく。急速に磨かれていく反逆の牙は、来るべき舞台で。カティア以外の傲慢に満ちたAクラスの面々の度肝を抜く形で、突き付けられていく。

 

皆で為した、心の壁を乗り越えて掴んだもの。それはエルメスにとって得難きもの。だが、まだ脅威は迫っている。エルメスの知らぬ所で、脅威の風は近づいている。

 

果たして一体、どんな奴等が敵となるのか。それを早く読みたい次第である。

 

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