前巻感想はこちら↓
読書感想:明日の罪人と無人島の教室 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、本日は「相棒」の新シーズンが始まり、久々に亀山君が右京さんと並び立っていた訳であるが、この作品にはミステリーという共通点以外は無いのでおいておくとして。この「鉄窓島」という絶海の孤島で、夕日やカナ達が向き合わなければいけないのは、「現実規定関数」なる数式により規定された「明日の罪人」、という運命である。というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。だがしかし、皆様何か引っかかられたのではないだろうか。そも、「明日の罪人」とは、何か?
それはいつかの未来とは言うけれど、その未来は「鉄窓島」を出てからの人生が計算の対象なのである。つまりは、この「鉄窓島」の中では関係がない。極論すればこの島にずっといるのなら、罪を犯さぬかもしれぬ。だが一年たてば死刑である。何かおかしい、矛盾がある。この矛盾は何に使えるのか、それは脱出計画。
そう、裏を返してしまえば一つでも罪を犯さぬ未来を用意することが出来れば、死刑も避けられるかもしれぬ。その一縷の未来に賭け、全員と友誼を取ろうとしながら脱出計画を練っていく夕日。だが、新たな教師も現れたこの島を更に知っていく中、夕日達を狙い必殺の罠が襲い来る。
一体そこには誰の思惑があるのか。そこには何があるのか。
そこにあるのは、「明日の罪人」と規定された子供達の鮮烈な感情。当たり前のようにこの島でもできる青春を過ごし、少しずつ運命共同体として絆を深めつつある彼等。だが彼等にも、互いには話していない思いがある。その思いが彼等の行動を狂わせていく。その思いは一つ二つと重なり、推理に挑む夕日の目を狂わす複雑さを醸し出していくのだ。
蘇生した者の思い。既に叶わぬ思いを抱いた者の思い。様々な鮮烈な感情に触れ、夕日の中で何かが変わりだす。少しずつ、この島への思いが変わりだす。
「いつか私が普通になって、誰かを好きになるなら、きっと夕日くんだと思うから」
変わらぬ思いを向ける、とあっけらかんと笑うカナ。彼女に言えなかった思いを、なんとか伝える事も出来。
「好きだよ」
更には彼には新たな恋も向けられ、普通の学生らしい青春も動き出す。
だが忘れてはいけない。彼等は一年後には死刑であるという事を。少しずつ終わりへのカウントダウンは進んでいる。そしてそのカウントは、彼等が思うよりも止めるのは難しいのである。
更に腹にたまる面白さが増していく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。