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読書感想:お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件5 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、二巻くらい前でやっとこさ付き合いだしたかと思えば、前巻である五巻では付き合いだして早々、恋人同士の距離感どこ行った? とツッコミたくなるような甘々っぷりを発揮していた周と真昼の二人であるが、この短編集においては一体、どんな甘々が展開されるのだろうか? と思われた読者様もおられるかもしれない。しかし予め、お断りしておこう。確かに甘々ではある、しかし甘々なだけではないのがこの短編集であると。
この短編集で描かれるのは、二人の「今」、そして「過去」。つまりは付き合いだす前、あの徐々に惹かれ合っていたころの甘々が再び楽しめるのである。
だが、それだけではない。シリアスは今ここに置いて行くとでも言わんかのように、真昼の冷遇されてきた過去というシリアスや千歳と樹の始まりと言う、今まで語られてこなかった脇を彩る物語の始まりと、今までにはない視点での物語もまた、綴られるのだ。
「今は、昔よりずっと綺麗に見えます」
「・・・・・・ちょっとだけ、残念です」
時に二人で流星群の踊る空を見上げたり。人をダメにするクッションに溶かされたり。周の好みについて悩んで人知れず呆れられたり。千歳の話から、あの日も今も変わらぬ周の心の色を知ったり。
そんな中、あの日母親に振り払われた辛い記憶を振り切るかのように。怯える心を一歩進めて、もどかしくても手を伸ばして。あの日見上げた灰色の空が、今はずっと色鮮やかに見える事を自覚して。
何気ない日々を積み重ね、何でもない時間がどんどんと特別になっていく。お互いが傍にいる事がいつの間にか当たり前に、大切になっていく。
隣人を越え友人に、そして友人を越え恋人に。短編集と言う日々を切り取って描かれる形式だからこそ、二人の関係の進展がよく分かるほどに真っ直ぐで。そんな二人の関係を改めて振り返り、ここに自覚させられるのは何だろうか。これこそがきっと、「尊さ」というものであるのだろう。
そして友人達の視点から二人を描くからこそ、客観的な甘さも楽しめて。今この時だけと言わんばかりのシリアスがあるからこそ、振り返る甘さが更に甘く。
故に今巻は、前巻までの本編とはまた違った甘さが楽しめる。ある意味では違った深みのある甘さが楽しめるのである。
アニメ化も決定し更にこの勢いと甘さは加速していく。この甘さ、是非皆様も楽しんでみてほしい次第である。