読書感想:お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件8.5

 

 さて、戻れば一つ進めば二つ、関係ない今できるコトを全部、という訳でもないがのんびり、まったりとであるが進み続けている周と真昼。正直、もはや夫婦のような関係である二人をもう心配する事はないであろう、と言うのは何度も言っている訳である。もう結婚して小さな命を抱えている光景が次巻辺りで年代ジャンプで描かれようが、もう納得であるこの二人。では今巻では何を描いていくのか、という訳であるが。

 

 

と、まぁ書いていく前にであるがまず初めにこの作品のタイトルを見ていただいて。画面の前の読者の皆様、こうは思われた事はないであろうか? 駄目人間にされていた、というけれど世間一般でいう「駄目人間」には、なっていないのでは? と。それもまぁそうかもしれない。心情的には彼女がいないともうダメ、という意味で駄目人間かもしれないが。

 

だがそれは、周だけではなく。真昼もまた、既に彼が居ないと、という状態であり、甘い意味での駄目人間と化している、というのが分かるのが今巻なのである。

 

「周くんって物分かりよすぎてたまに困ります」

 

2人でいても常にべったりしている訳ではないから。けれど同じ時間を共有する中、真昼は周の隣で日記をしたため。 周は無理にその内容を聞こうとはせず、熟年夫婦のような距離感での以心伝心を覗かせる。

 

『必ず幸せにしてくれる人の胃袋掴むのよ』

 

その以心伝心を一先ず脇に置いておいて。 級友とばったり遭遇したり、周の両親の親としての会話を盗み聞きしてしまい、自分もまた、周の両親に娘として受け入れられていると言う事を知って。その中で思い出していくのは、小雪の言葉。さて小雪とは誰かと言う事であるが。それは彼女の家に来ていたハウスキーパーの言葉である。

 

言ってしまえばそれだけ、他人同士の関係。しかし真昼にとっては、母親よりも母親のようだった存在。 真昼の家庭環境を間接的に知っていたからこそ、彼女がいつか一人でも歩いて行けるように、ひいては大切にしてくれる人を掴めますように、という足がかりを教えてくれた存在。

 

今まで色々あったし、疎まれて嫌な思いもしたけれど。両親の愛、というのは結局分からなかったのかもしれないけれど。

 

「私にも、周くんを幸せにさせてくださいな。私『と』幸せになるのでしょう?」

 

それでも、いい事はあった。見つけることが出来た、出会う事が出来た。幼き日に何気なく望んだ幸せの形、それは確かに今、ここにあるのである。

 

彼女の本心と過去が何気なく語られ、その内面が見えてくる事でより甘さを増していく今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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