読書感想:アナザー・エゴ 男女逆転の執行者は、世界最弱の令嬢を護衛する

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 さて、「トランスセクシャル」、略してTSする主人公と聞いて画面の前の読者の皆様が連想されるのは誰であろうか。お湯を被ると性別が変わる、昭和の漫画のかの少年だろうか。宇宙人の捜査官の女性と体を共有してしまった、とある平成の漫画のかの少年か。それとも、とある呪いで性転換してしまった忍者な、令和の漫画のかの少年であろうか。

 

 

その答えに明確な正当の例は無いので各自考えていただくとして、TSする主人公と言うのは中々にいないのかもしれない。しかしこの作品の主人公は、体質により性的興奮を覚えるとTSするという厄介な問題を抱えているのである。

 

 その主人公の名はユージ(表紙左上)。ユーリ(表紙右上)という姿とユージとしての姿を使い分ける少年であり。人間と魔人が鎬を削るとある異世界、そこに存在する国の一つであるオルレリア王国で宮廷魔術師団の特務課に属する少年である。

 

そんな彼に下された新たな任務、それは王国の魔術学院に通う少女、シャル(表紙手前)を護衛すると言うもの。同僚をバックアップに潜入し、あっという間にユーリとして注目されていくユージ。

 

 だが、対照的にシャルは学院で苛められる日陰者としての学生生活を送っていた。それは何故か。それは彼女が魔術師の最強家系の一つの一人娘でありながら、過去の誘拐事件に起因するPTSDが切っ掛けで自身の魔力の制御が出来なかったから。

 

苛められる彼女を見つめ、しかし深入りすることはせず。だが、ひょんな事から自分が実は男であると言う秘密が彼女に露呈してしまい。秘密を隠すと言う条件の元、彼女に魔術を教える事となってしまう。

 

シャルに執拗に結婚を申し込んでくる、大家の次期当主、シンを退ける為に国の祭典である、「競技祭」の場で決着をつける事となり。

 

そこへ向かい集中的に訓練をする中、少しずつ彼女の事を知っていく。彼女と本当の意味で向き合う中、ユージが知らぬ感情をその心に芽生えさせていく事となる。

 

「それでも。規則に則った行動が、必ずしも正しいものとは限らない」

 

 それは、今まで「機械」のように任務に励んでいた彼の心の中に芽生えたノイズ。しかしそれは、彼が「人間」となる為に必要であったもの。任務と言う繰り糸に操られる人形であった彼の糸は切れ、人間となる資格は与えられる。

 

隊員ではなく、人間として。魔族最強の一角、「七大罪」の一人に誘拐されたシャルの元に駆け付け、彼女を守る為に。

 

敵は圧倒的な格上、その戦いの鍵となるのは何か。それはシャルがユージの心に齎してくれたもの。それが目覚めさせる、ユージの本当の力。

 

題材は一風変わっていながらも根は王道ど真ん中、故に安心して読めるのがこの作品である。

 

王道の面白さを楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

アナザー・エゴ 男女逆転の執行者は、世界最弱の令嬢を護衛する (講談社ラノベ文庫) | 生輝 圭吾, motto |本 | 通販 | Amazon