読書感想:カンスト村のご隠居デーモンさん2 ~拳聖の誓い~

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前巻感想はこちら↓

読書感想:カンスト村のご隠居デーモンさん ~辺境の大鍛冶師~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の感想にてこの作品の趣旨は十分に分かっていただけただろうと思う。この作品は、カンスト村に住まう英雄達に導かれ、英雄の卵達が成長していく物語である。だが、それだけではない。カンストした者達は本当に成長しないのか? カンストした者達だって成長しない訳が無いのである。

 

師匠は弟子を導き成長させるもの。だけど、それだけではない。弟子だって師匠に影響を与え、成長させるものなのだ。

 

 では、成長させられる師匠は誰か。それは、この村の神父であるブルドガング。伝説的なモンクでありながらも破門された破戒僧である。

 

 前巻の騒動の後に訪れた平穏な日々。けれどそれは長く続かなかった。

 

 まるでかの騎士団長のように、唐突に村を訪ねてきた者。その名はザザ。ブルドガングのかつての弟子であり、モンク最強の八人の候補者に名を連ねる実力者である。

 

何故ここに訪れたのか。その答えは、ブルドガングが所持する伝説の鎧の一つ、「竜胆」を譲り受ける事。しかしその目的は、愛する兄弟子に鎧を上げるという、思わず口があんぐりと空いてしまいそうな色恋目的だったのである。

 

それだけであれば、ブルドガングだけで話は止まっていたであろう。だが、話はそれで終わりはしない。何故か彼女が纏っていた伝説の鎧の一つ、「鳳仙花の鎧」は強力な呪いを受けていた。しかもその呪いは、何故か解呪出来ず、それどころか呪いに詳しい筈のポーリオンですら匙を投げるほどの面倒に過ぎる呪いだったのだ。

 

破魔の中に呪いを宿す、しかしその呪いは簡単。一体どういう事なのか? 厄介事の決意を感じながらも公爵はギルメウスをモンクの総本山に送り出す。

 

その裏、語られるのはブルドガングの御伽噺。何故彼は竜を殺すという偉業を成し遂げたのに追放され、ここに流れ着いたのか?

 

 それは、自分達の居場所であった総本山の目と鼻の先で暴れていたドラゴンを、戒律を破って倒したから。教えを守る事に固執する上層部の意向に逆らってしまったから。

 

「モンクの教えがヌシを否定しても、吾輩は何度でも言おう。ヌシは英雄である。ヌシに救われた命は、今どこかで笑顔に満ちておるはずなのだから」

 

「ヌシは、間違っておらぬよ」

 

だが、まるで八つ当たりのように強者達を打ち倒し。行く当てもなく流離うままに、まるで獣のように生きていた彼を公爵だけは認めてくれた。だからこそブルドガングはこの村に居ついたのだ、公爵の側で、人を救えるように修行したいと願って。

 

その彼の前、状況は急転を迎える。ザザが辿り着いた一つの納得のいく仮説。モンクの総本山そのものに何か異変が起きていると言う可能性。そして、ザザに開祖の生まれ変わりであるという運命を感じ、彼女の相棒として契約した新たな魔装具、バロビュートは確かな確信を以て言う。開祖の鎧が何者かによって盗まれている。その者のどす黒い念により加護が汚染されていると。

 

 彼等の目の前、奪われた開祖の鎧を纏った真犯人が姿を現す。その名はアルマ。ザザが惚れ込んでいる兄弟子にして、理想の救世への狂気に囚われた者。

 

彼の圧倒的な強さにヨートは傷つけられ、それを目撃した公爵は怒り狂い圧倒的な力を解放する。

 

 だが、それだけはさせてはならぬ。彼の全てを崩させてはならぬ。なればこそ、今こそ彼を救う時。それこそが彼の「救世」。

 

「怒りに飲まれて人を殺しちゃいけねぇ。 それでは貴方が救われねえ!」

 

必死の決意で拳を振るい、公爵の目を覚まさせるブルドガング。

 

「最初から最後まで私はモンク。私は! 私の救世をするの!」

 

 そして、彼の目の前で。あの日の幼子であったザザは己の救世の覚悟を示し、彼女だけの技を目覚めさせ、兄弟子を救い出して見せる。

 

そう、ザザは正に今、新たな英雄として覚醒したのだ。歩き出したのだ。そして公爵に私淑していたブルドガング。 公爵という「英雄」の「弟子」であった彼もまた、追いかける者から見守る者となる。一人前となって、恩人である公爵にようやく並び立てたのだ。

 

前巻にも増して圧倒的、それほどまでに王道なファンタジー的面白さがある今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、、やっぱり王道ファンタジーが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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