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読書感想:俺の姪は将来、どんな相手と結婚するんだろう? - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、今巻の感想を書いていく前に一つ、残念な前置きをしなければならない。それは、この作品が今巻で最終巻、言わば二巻で打ち切り、という事である。本当にもったいない、もっと続いてほしかったと残念に思う次第である。では、今巻では一体どんなお話を描いていくのだろうか。
「通い妻相手に遠慮なんかしなくてもいいのに」
「だから、通い妻はやめろって。意味と状況が全然合ってないから」
絵里花が結ニの部屋に通うようになって早数か月。夏休みも近くなり、暑い季節が迫る中。相も変わらず、まるで恋人同士のように見えても仕方ない程に、二人は狭いアパートで同居生活をしていた。
何も変わらないように見えていて、けれど何かは確かに変わり出している。街角でスカウトを受けた事、そして前巻で飛び入りでお芝居に参加した事。様々な経験が、絵里花の心の中で役者として再起すべきかどうか、という事への悩みを創り出していた。
「過去の栄冠にすがって、なにもせず返り咲けるほど、甘い世界じゃないと思うぞ」
甘くないと知るからこそ、大人としての態度でまずは様々な社会経験を積むべきだと諭す結ニ。その思いを有難く思い、納得出来る心もある。だが、早く大人としてみてほしと言う心もある。
その相争う心が焦燥を招き、半ば暴走するように行動を起こしてしまう絵里花。その話を聞き、急ぎ彼女の元へ駆けつける結ニ。
「でも本当に『大人』な人間ってのは、たぶん、ちゃんと他人を頼れる人たちなんだと思う」
彼の言葉に気付く、大人になると言うのが本当はどういう事かという事。どれだけ自分が彼に甘えていたか、だけどその甘さに甘えていれば良かったのだ、という事。
「私が大人になって、恋人を作る気になって―――結婚するその日までで、いいからさ」
だからこそ、今は、今だけは。「子供」として「大人」に甘えて。いつか自分が彼の元を巣立つまで、いつか来る終わりの日までは、と。それが絵里花の見つけ出した、自分だけの答え。
無論、今巻はそんな「選択」に関する重さだけに非ず。夏祭りや海水浴と言った、夏らしいイベントも大人も子供も交え繰り広げられる。
だからこそ、一種の爽やかさと甘さ、家族愛の温かさが面白く。最後まで心の中に沁みこんでくるのである。
重ね重ね、もっともっと、それこそその最後まで読んでいたかった次第である。
俺の姪は将来、どんな相手と結婚するんだろう?2 (GA文庫) | 落合祐輔, けんたうろす |本 | 通販 | Amazon