読書感想:世々と海くんの図書館デート(5) 春めくきつねは、つりばしにゆられて、あのこに会いにゆきます。

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前巻感想はこちら↓

読書感想:世々と海くんの図書館デート(4) クリスマスのきつねは、だんろのまえで どんなゆめをみる? - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻までを楽しまれた読者様であればこの作品の主人公である海くんとヒロインである世々の、中学生らしい純粋で真っ直ぐな恋模様はもうお分かりであられるだろうし、お楽しみいただけているであろう。だが、真っ直ぐであるからこそ思い悩む事だってある。大好きだからこそ思い悩んでしまう事もある。それはどんな年代の恋においても、変わらないものなのかもしれない。

 

 

「由鷹・・・・・・おれ、世々を束縛しすぎなのかな・・・・・・。」

 

付き合う中で段々と見えてきた、海のやきもち焼きな一面。いっそ年齢よりも幼いとさえ思えてしまう、けれど可愛いものな独占欲。そんな独占欲を自分でも持て余し振り回され。抑え込もうとして見ても、どこか不自然な対応を招き、それが世々の心の揺らぎを招いてしまい。

 

そんな二人の関係に波紋を齎さんとする影が一つ。その名は久遠。個体数の少ない化け狐の少年であり、周囲から甘やかされて育った王子様的な少年である。

 

世々の姉達に次々と告白したかと思えば世々にまで告白し、更には彼女に付きまとい。

 

 だがしかし、画面の前の読者の皆様安心してほしい。多少のお邪魔虫程度で揺らぐ二人の恋などでは勿論ない。寧ろその存在は、二人の恋をより高める起爆剤となっていく。

 

「世々にさわるな! じゃれつくなぁぁぁっ!」

 

親戚として紹介された彼の世々へのスキンシップを我慢しようとするも、嫁の一言に遂に怒りが爆発しまるで鬼さんのような怖い顔で怒鳴りつけ。

 

我に返って思わず世々の手を引いて走り出し、抑えられぬ自分の思いを吐露し。

 

「海くんにやきもちをやかれるの、わたし、うれしいです。だから、ちゃんとやきもちをやいてくださいね。」

 

そんな彼の思いに温かさと自分への愛を感じ。やきもちもまた嬉しいと心高鳴り、また彼への恋が深まっていく。

 

 春めく空気が新たな季節を連れて来て。少しずつお別れの日々は迫ってきているけれど。それでも二人の恋は変わらぬどころか深まっていく。どんどんと二人だけの特別が増えていくのだ。

 

海のお母さんと邂逅し、世々のお母さんとの意外な繋がりが判明し、海と世々の意外な繋がりが判明したり。お付き合いを始めて一年の記念日を二人でお祝いしたり。

 

「つりばし ゆらゆら」、「うまれてきてくれてありがとう」、「あのこに あえた」。三つの名作が見守る二人の恋は更に甘く、尊く。

 

「実は、わたしはきつねなんです。」

 

だから、もう明かしても大丈夫。そんなくらいじゃ二人の絆はびくともしないから。胸にこんなにも、穏やかな幸せな気持ちが溢れているから。

 

春夏秋冬一巡り、けれどもう少しだけ、いやもっと。二人の恋の続きを拝みたいのは私だけだろうか。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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