読書感想:三つの塔の物語

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 さて、昨日の記事でもお伝えした通り本日は過去に完結した作品を改めて読了した上での感想記事を画面の前の読者の皆様にお送りさせていただくわけであるが、この作品をご存じという読者様は、果たしてどれほどおられるのだろうか。 もしかすると、最近の読者様であれば見た事が無いという読者様もおられるかもしれない。しかしそれもまた仕方のない事かもしれない。この作品のシリーズ第一巻。この巻が刊行されたのは今から五年前の三月。五年前と言うと、オタクであるならば、もう一昔前となってしまうのではないだろうか。

 

 

だがしかし、この作品は確かな面白さを持っている。今の時代でもそれは変わらない。何故ならばこの作品は王道のファンタジーであり、そして正に「登場人物達が生きている」から。個人的な私見ではあるが、登場人物達の生の息吹が感じられるからこそ、この作品は面白いと言えよう。

 

では一体、この作品は一体どんな作品なのであろうか。

 

 その答えは、大河の中の一滴と言えば伝わるであろうか。連綿と流れる歴史と言う大河の何という事もない一滴。だが確かにそこに存在している「時」の物語であり、メインヒロインの一人であるイサラ(表紙左)がその「時」を取り戻す為のお話なのである。

 

神と人間が親しく交流し、今は未だ神の時代であると言えるとある異世界。その世界の片隅、田舎の村で過ごす平和な時間は唐突に終わりを告げる。物凄く平たく言ってしまえばロリコン野郎である魔術師と、この世界における魔族である魔壊族の陰謀に巻き込まれ。呪いのような魔術によりイサラの時は十歳の状態で止められ、このままではあと二十年と生きられぬ状態へと陥ってしまったが故に。

 

呪いを解除するために必要なもの、それは王都にある大迷宮である「塔」の中でしか手に入らぬ三つのレア素材。そして、探索する者の中でも最上級と言っても過言ではないレベル。

 

それでも尚、諦めるわけにはいかぬ。三年の時を経て。幼馴染であるフーズ(表紙右9と共に向かう王都。胸にあるのは、果たすべき目的への熱。

 

 そして、王都で出会うのは幾つもの今まで見た事のない景色。それと、そんな景色の広がる世界で生きている、様々な者達。

 

宿屋の人に始まり、初心者である自分達に絡んできた先輩たちに至るまで。皆自分の思いに正直で、けれど明確な悪はおらずどこか憎めぬ奴等ばかりで。

 

「んー・・・・・・ユートレアの木ってのはどうだ?」

 

 そんな都で出会ったコンビの冒険者、斧使いのローカスと魔術師のアリア。彼等とパーティを組み挑む塔は、時に意地悪に、時に優しく彼等を出迎える。挑んでこい、登ってこいというかのように。

 

 だからこそ、この世界は面白い。そしてワクワクできるのかもしれぬ。

 

懐かしき作品に触れてみたい読者様、王道なファンタジーが読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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