読書感想:宮廷魔法士です。最近姫様からの視線が気になります。2

f:id:yuukimasiro:20210613141035j:plain

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:宮廷魔法士です。最近姫様からの視線が気になります。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品における主人公、レイズの王国内での扱いについては前巻を読まれた読者様であればもうご存じであろうが、簡潔に一言で言えば、「兵器」である。超強力な兵器であり、それ故に王都に駐在する事を求められる存在である。だが、彼等は対外的に強力な手札となるのも確かな事実であり、政治的な暗闘の火種となってしまうのも確かなのである。

 

 

前回、王女襲撃事件からはやくも数日。事件を明らかには出来ないので受勲とかは無かったけれど、多くの報奨金を手にしたので懐も温かいレイズ。

 

 が、しかし。地獄のような量の仕事に忙殺されるとしてもそれなりに平和だったはずの彼の一日は、唐突に終わりを告げる。いきなり同僚のアリナに拉致され。室長の元へ連れていかれて告げられたのは、七日間の二人きりでの出張という任務。

 

舞台となるのは、王国東部、公爵が支配する広大な農地。そこで一か月前ほどから起きている作物の不作問題を調査すると言う事。

 

二人向かった公爵領、再会した公爵の娘、レナ(表紙左)。そして激励で回っていたため偶々いた、リシェナ王女。

 

 ここまで書いてお分かりであろうか。今巻は仄かにミステリーの香り漂う巻であり、魔法と言うものが存在するからこそ起こった事件を解決するためにレイズとアリナが奔走する巻である。

 

事件の裏に隠されているものは何か。それは植物学者の愛を踏みにじる謎の組織の黒い思惑。愛を呪いに変え、その心を堕とし、恐怖を媒介に魔物を生み出す、狂気的な策略。

 

「うちの室長曰く、あの子は殲滅兵室で一番の戦闘狂。自分が穿つと決めた相手は、どれだけ離れていようと絶対に打ち抜く。だから、瞬きせずに見ていなさい。王国最高のスナイパーが見せる―――神業を」

 

 それを許す訳もない、悪を許せるわけもない。そして、たとえ一瞬だとしても、助けたいものがある。だからこそアリナはレイズの無茶な要望に応え、レイズは彼女の期待に応えるかのように、猛き炎の矢で以て、一瞬のチャンスをものにしてみせる。

 

彼等は強い、その強さで以て王国の平和を守る殲滅兵達。だが、多くの人に兵器として扱われるだけであっても、そうではなく、一人の人間として見てくれる人達もいる。それはレナも同じ、そしてリシェナも同じ。

 

「これくらいなら、いいですよね? レイズ様」

 

「私はいつまでも、待っていますから」

 

 いつもの王都とは違う、お邪魔虫のいない非日常的空間で。少しだけ深まる二人の仲と、絡まる思い。例え身分差があるとしても、今この時くらいは。そう言わんばかりの、二人きりの逢瀬。

 

ラブストーリーとして更に甘さを出しながら、ミステリーの色を絡め、更に世界が奥深くなる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、やはり王道ファンタジーが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

宮廷魔法士です。最近姫様からの視線が気になります。2 (ファンタジア文庫) | 安居院 晃, 美和野 らぐ |本 | 通販 | Amazon