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読書感想:ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、今巻の感想を語っていく前に一つ、画面の前の読者の皆様にお聞きしておきたいことがある。皆様、シンギュラリティという言葉はご存じであろうか。もしも仮面ライダーゼロワンをご覧になっていた読者様がおられたら、非常によくご存じであろう。
人とAI、そこに何の違いがあるのであろうか? AIが、ロボットが心を、自由意志を抱かないなんて事は果たして事実なのだろうか。どこまでいっても、彼等のそれは感情の模倣。果たして、本当にそうなのだろうか?
前巻の騒動後、電索官として再びハロルドとコンビを組み、事件に挑もうとするエチカ。だが、次の事件は歩み出した彼女を躓かせようとするかのように、すぐ側から唐突にやってくる。
その事件とは、ハロルド達女王の三つ子、その正式名であるRFモデルの関係者襲撃事件。スティーブは機能停止中、最後の一体であるマーヴィンは未だ行方不明。故に最後の一体であるハロルドに嫌疑がかかるのは当然であり。だが彼が拘禁されている中、遂に現在のハロルドの所有者であるダリアにまで、犯人の魔の手が及んでしまう。
電索で潜った記憶の中、垣間見るのはマーヴィンに似てマーヴィンではない、謎のRFモデル。その姿を追い、事件の詳細を調べるため。エチカとハロルドは、英国の街にて捜査を開始する。
その捜査の中、交錯していくのはハロルド達の生みの親、レクシー博士。彼女の研究に反対していた元同僚、ファーマン。そしてRFモデルの最後の一体、マーヴィン。
尻尾を捉えたかと思えば、マーヴィンの「死」により振出しに戻り。かと思えば、状況はまた急転を迎え、誰しもが予想しなかった方向へと進んでいく。
その中、明らかになっていくのはRFモデル開発の真実、そしてレクシーとファーマンの確執、レクシーが隠していたもの。
彼女はハロルド達の中に何を組み込んだのか。それは禁忌の研究の続きにしてハロルドを唯一無二たらしめるもの。
『本当は―――敬愛規律なんてはじめから存在しない』
『私は正常です。ただ、敬愛規律の正体を知っているだけだ』
そう、始めから彼等は規律になんて縛られていなかった。そして彼は、人と同等の知性と心を与えられていたのだ、始めから。
つまりは分かったように見えて、エチカもハロルドも、お互いに何も知らなかったのであるお互いの事を。お互いを見ているように見えて、まだ深淵まで、全てをのぞき込むまでには至っていなかったのである。
「―――あなたに近づけるよう努力します、電索官」
だからこそ、ここからが本当の始まり。人間とアミクス、不器用な一人と一体の凸凹コンビの、コンビとしての本当の始まりはここからなのだ。
重厚なサスペンスが好きな読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
ユア・フォルマII 電索官エチカと女王の三つ子 (電撃文庫) | 菊石 まれほ, 野崎つばた |本 | 通販 | Amazon