読書感想:ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はもし、捜査に必要だから貴方の記憶を見せてくれと言われたら素直に受けるだろうか。もし自分の記憶を覗かれてしまうとしたら、貴方は抵抗なく受け入れられるだろうか。

 

かつての昔、1992年。世界はウイルス性脳炎パンデミックに見舞われた。そのパンデミックの脅威を解決する事態となった医療技術は今、この世界でなくてはならない情報技術へと進化を遂げていた。

 

 その名は「ユア・フォルマ」。「脳の繰り糸」とも称される脳に埋め込み使用するその端末は、とある一つの特徴があった。その名は「機憶」。人間の視覚や聴覚、感情までをリアルタイムで克明に記録するその機能は、重大事件に限り捜査の一環として使用されていた。そして、その捜査に当たる者達は「電索官」と呼ばれていた。

 

電索官、エチカ(表紙中央)は史上最年少で電索官に選ばれた少女であり、自殺した父親がユア・フォルマの開発者であり、あまりにも能力が高すぎて数々の相棒の脳を焼き切り病院送りにしてきた少女である。

 

そんな彼女は、世界各地の大都市で巻き起こり出した、自己増殖ウイルスを用いた新種の自己増殖ウイルスを用いた知覚犯罪の捜査に向かうに辺り、新たなパートナーを獲得する。

 

 その名はハロルド(表紙左)。あまりにも人間に似たロボットであり、普通のロボットの範囲を逸脱した、エチカにも匹敵する情報処理能力の持ち主である。

 

「きみには悪いけど、まあ・・・・・・その通りだ」

 

「構いませんよ、そういったことはあまり気にしません。きっかけは何です?」

 

過去のトラウマからロボット全般が大嫌い。けれど今、自分についてこれるのは彼だけ。不本意ながらもコンビを組み、エチカは真実を探していく。

 

「きみはどうして、見れば分かるんだ?」

 

「過去に、優秀な刑事から指導を受けました。それだけです」

 

あまりにも優秀なハロルドに問いかければはぐらかされたり。

 

「あなたは何故、自分を冷たい人間に見せようとするのです?」

 

逆にハロルドに問いかけられ、自分の内面すら見透かしたその問いかけに心氷らせたり。

 

凸凹コンビの捜査は続く中、エチカは周囲に笑いを振りまくハロルドとのふれあいの中、自らを振り返り彼と距離を近づけていく。それもまた、彼の策略だと知らずに。

 

そう、策略である。エチカは踊らされている。この事件の黒幕の思惑に。そして、全てを掌の上で転がすハロルドの思惑に。

 

幾重にも誰かの策略が絡まり合う中、その根底にあるのは何か。それは確かに誰かへの「愛」だ。

 

事件の黒幕が過去、大切な友人へと向けた「愛」。

 

そしてハロルドが大切な恩人へと向け、今も尚恩人の敵討ちに走るほどの「愛」。

 

感情かプログラムか。どちらも電気信号に過ぎないかもしれない。けれど、「心」に根差しているのなら、それは「愛」なのである。

 

サイバーパンク的な作り込まれた世界の中、重厚なクライムサスペンスが繰り広げられ、強い個性と魅力を持った登場人物達が躍る。

 

だからこそ面白い。昨今の流行なんて関係ない。ここから新たな世界を作ると言わんばかりにこの作品は繰り出されている。そして、この作品は正に大賞に相応しい面白さを持っている。私はそう保証したい。

 

SF的世界観が好きな読者様、重厚な物語が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫) | 菊石 まれほ, 野崎つばた |本 | 通販 | Amazon