読書感想:ユア・フォルマ IV 電索官エチカとペテルブルクの悪夢

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前巻感想はこちら↓

読書感想:ユア・フォルマ III 電索官エチカと群衆の見た夢 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この世界に於ける事件は中々に終わらず後を引き、中々根本的な解決に至らない、というのはこのシリーズを読まれている読者様であれば、もうご存じであろう。それは現実的な視点からすれば、当たり前の事実なのかもしれない。そう、終わっていない事件がある。まだ何も終わってはいない事件がある、というのは画面の前の読者の皆様ももうご存じなのではないだろうか。それこそが今巻のサブタイトルとしても採用されている「ペテルブルクの悪夢」事件である。

 

 

ハロルドの脳裏、メモリーにまるで焼き付いたかのように残る忌まわしき記憶。規律によって邪魔され、目の前でかつての恩師であったソゾンを喪うしかなかった過去。その思いを知るエチカはそれを一旦置いて行くかのように、事件の捜査へと突き進む。だが、一連の事件の首謀者とされるAI、「トスティ」。その開発者の影はどこにも見えず。空を切る日々ばかりが続く。

 

 そんな中、かの忌まわしき事件が再び起きる。死んだ筈のソゾンからの電話、そこから繋がるのは「ペテルブルクの悪夢」の再来。しかし、今回狙われたのは人間ではなくアミクスであり。故に模倣犯として取り扱われる中、ハロルドは自身の意思でその事件へと首を突っ込んでいくのである。

 

もう後悔はしたくない、例えこれが模倣犯であっても。

 

「差し支えなければ、彼女をしばらくの間、捜査から外していただけないでしょうか」

 

その思いを間近で見つめ、それでも彼を止めたくて。不器用なりに何とか引き留めようとするエチカも引き離し。諦め、いざという時は止めれるようにとエチカも協力することを決め。二人は事件の解決へと乗り出していく。

 

 ソゾンの弟、ニコライやかつての同僚であるシュピンやナポロフ。幾多の人間が捜査線上に上がり、本格的に復帰したビガも参加し進む推理。彼等の目の前で真実は二転三転をし、感情的になったハロルドが気が付かなかった真実が、本当の真実をひた隠す。

 

だが、真犯人との対峙、そしてエチカとの激突と真犯人の電索。その果てに判明したのは、ソゾンは真犯人の模倣犯に殺されたと言う事。それ即ち、事態は未だ何も終わってはいないと言う事。

 

「もし・・・・・・いつか私の『秘密』が公になったとしても、どうかかばわないでください」

 

故、ハロルドの思いもまだ終わらない。そして彼は、今回の事件で大きなものを背負ってしまった。だがその代わりに得たものがある。エチカとの「約束」がその記憶の中に。果たして本当の犯人との対峙の時、そこに何が待つのか。

 

シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。