読書感想:となりの彼女と夜ふかしごはん2 ~ツンドラ新入社員ちゃんは素直になりたい~

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前巻感想はこちら↓

読書感想:となりの彼女と夜ふかしごはん ~腹ペコJDとお疲れサラリーマンの半同棲生活~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今巻の感想を書いていく前に私は一つ、画面の前の読者の皆様に残念なお知らせをしなくてはいけない。どうやらこの作品は、ここで「一旦」の完結であるらしい。残念無念の限りである。もっと優勝したかった。そう悔いてしまうのは私だけではないと信じたい。けれど、敢えて私は作中の言葉を借りてこう言いたい。へばまんず、秋田の方言でまた会おう、と。

 

では今巻の中心となるのは誰か。それは表紙からもうお分かりであるかもしれない。前巻で主人公であるマコトに絶対零度の態度を取り続けた後輩、文月である。

 

一年次が経過したことを祝う飲み会。自分を貶されるばかりかマコトの事まで貶され。同僚であるネネと売り言葉買い言葉で誓ってしまったのは、次の昇格試験で一位となる事。文月の事を考えると、奇跡でも起こさなければ無理。そう言っても差し支えない無理難題。

 

「・・・無理ですよ」

 

話を聞こうとするマコトが聞いたのは、今まで聞いた事もない彼女の弱音。

 

 その弱音から始まり、マコトは文月の今まで知らなかった内面へと踏み込み、目撃していく。自分に対してだけ冷たかった彼女が一体何を考えていたのかを。

 

「―――私、正しさ以外はなにもないんです」

 

そこにいたのは、ツンドラな外皮をはぎ取った中にいたのは。ただ、正しさに従いその選択のままに生きてきたからこそ追い込まれてしまった彼女。何もかもを背負ってしまう、不器用に過ぎるが故に生きづらい等身大のカノジョ。

 

「誰だってそうなんだよ。文月さんだけじゃない。みんなが同じ不安を抱えてる。俺だってそうなんだから」

 

 そんな彼女に対しマコトは真摯に向き合い告げる。自分だって同じ、皆だって同じ。けれど皆違って皆いい。皆それぞれいいところがあるからこそ働けているんだと。

 

初めて聞いたマコトの説教。同時に知った、仲の良かった退職してしまった同期、ヒカリが隠していた思い。文月の事が大切だからこそ、秘密にしなければいけなかった思い。

 

全てを受け取り、溢れる水流の中に目を浸し。ようやく目覚めた文月は、今までとは違う様子で勉強に仕事に邁進する。

 

そんな彼女に奇跡が舞い降りぬわけがあるか? 否、そんな事は無い。神様は基本的に意地悪だし残酷だけれど、努力した者のみが掴める可能性があるのは自明の理なのだから。

 

働く者達の悲哀と懊悩、けれどその中に確かにある熱い感情が腹が減る料理に彩られ燃え上がる今巻。

 

 

前巻を楽しまれた読者様、お仕事系ラブコメがやはり好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。