読書感想:世々と海くんの図書館デート(3) ハロウィンのきつねは、いたずらな魔王様といっしょにいたいのです。

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前巻感想はこちら↓

読書感想:世々と海くんの図書館デート(2) 夏のきつねのねがいごとは、だいすき。だいすき。だいすきです。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

トリックオアトリート、それはハロウィンの時だけに通じる魔法の言葉。お菓子くれなきゃいたずらするぞ。ではこの作品の主人公である海くんとヒロインの世々の場合はどうなってしまうのか。答えは、この先の感想で明らかにしていこうと思う。

 

すれ違いの夏も終わり季節は秋。二人の暮らす村にも、ハロウィンの予感が秋風と共にやってくる頃。何故か最近、海はぼーっとしている事が多く。心配する世々にも大丈夫だと言うばかり。

 

が、しかし。二人の仲を裂かんとするかのように、無粋な輩による世々の誘拐事件が勃発してしまう。だが、無論動かぬ海である訳でもなく。血相を変えて後先考えずに飛び出して。誘拐犯にも凛とした怒りを以て接し、あっという間に世々を取り戻す。

 

而してその波乱は新たな波乱の呼び水となる。世々の誘拐未遂事件を知った姉の水晶と紅葉が、海を試すと言う名目の元にどっきりパーティーという名の色仕掛けを仕掛けてきてしまう。

 

「すみません。おれ、彼女とデート中なので・・・・・・。けがもないようなので、これで失礼します。」

 

「中学を卒業しても、大人になっても、その先も、ずっと世々といっしょです。」

 

 が、しかし。姉達の特殊能力付きの誘惑にブレる事もなく。海は真っ直ぐな心と瞳で姉達に宣言してみせる。ずっとこの先も彼女と共に。絶対に心変わりなんてしないと。

 

そう、前巻を読まれた読者の皆様であればもう知っておられるであろう。すれ違いと涙の夏はとうに過ぎた。なればここからは、更に深まった絆で。中学生という無垢なる年頃だからこその、純粋で真っ直ぐな恋で。折れず曲がらず。そして心を交わし合ったからこそ、彼女を守る為に誰が相手でも全力で。

 

「たいへん たいへん イギリス昔話」。「いっしょに いたいな いつまでも」。「ハッピーハロウィン!」。

 

不朽の名作である絵本たちに見守られ、秋、そしてハロウィンパーティの中で。二人の恋は更に深まり、まるで山を彩る紅葉のように色付いていく。迷わずお互いだけを見つめている、だから大丈夫だと言ってくるかのように。

 

「世々、トリック・オア・トリート。」

 

「・・・・・・お菓子、持っていなくて、良かったです。」

 

ハロウィン限定、同じ角を生やしたいつもと違うデート。勇気を持って告げ、二人の距離を零にして。

 

何も心配のない、甘さが更に深まり香ばしくなる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、やはり野村美月先生のファンの読者の皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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