読書感想:時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は日常生活の中で、学生の皆様は英語以外で、何か日常的に外国語に触れられている人はおられるだろうか。例えば仕事で必要であれば完璧にその言葉を理解されているだろうが、もしそうでなければ何を言っているか分からず、歯がゆい思いをされた事はあられるであろうか。

 

因みに私は現状、職場に出向で来ている技能実習生の人達のフィリピン語とベトナム語を耳にしているが何を言っているのか全く分からない。が、それしか話せぬ人もいるので困ってしまう次第である。

 

それはともかく、この作品の主人公である政近はそんな事は無い。彼には能ある鷹は爪を隠すという事を示すかのように、隠していたスキルがある。

 

 それは、過去に起因するとある事情によりロシア語のみネイティヴのレベルで意味が分かると言う事。そしてそのスキルは、とある美少女とのラブコメを齎す始まりとなるのだ。

 

その美少女の名は、隣の席の「孤高のお姫様」と呼ばれる生徒会会計、成績優秀なアリサこと通称アーリャ(表紙)。表紙からも見てわかる通り、ロシア系のハーフの美少女である。

 

「そうね、誰であれあなたと一緒にはされたくないでしょうね」

 

口を開けばお小言ばかり、政近の心をこれでもかと突き刺してくるアーリャ。

 

【真面目にしてればかっこいいのに】

 

 だけど、時折ロシア語で繰り出される彼女の言葉はどこまでも甘く。政近の事を心配したり、何処か可愛い不満に満ちたデレデレな言葉である。

 

無論彼女は政近がロシア語を理解できているとは分からない。その言葉の意味は、政近のみが知っている。

 

 だからこそ、彼女の言葉は二重の意味で政近の心に沁み込み、時に振り回し、時に優しく追い詰める。何故そんな事になっているのか、それは彼女と彼のちょっとだけ過去の話に起因しているのである。

 

始まりは何処か気だるげな、無気力な奴だとばかり思っていた。だけどある日、自分が困っていた時に突然前に出たかと思えばあっさりと彼女を助けてくれた。

 

何処か不思議で、何処か変。だけど、だからこそ彼だけは競わなくていい。誰よりも自分らしく接する事が出来る。そんな安心できる場所、アーリャにとっての政近はそんな存在で。

 

いつもいつも変わらぬ日々、時に着せ替えショーを見せつけたり、時に靴下を履かせて貰ったり、激辛ラーメンを共に食べに行って悶絶したり。

 

けれど彼女はいつも孤高で孤独。彼がそばにいるけれど、いつも一緒にいてくれるわけじゃない。

 

それは何故か。何故なら政近は、とある過去の出来事により昼行燈を貫いているから。何にも本気にならずに、そんな姿勢を貫いているから。

 

けれど。

 

【誰か、助けてよ・・・・・・】

 

 不意に届いた、自分にしか分からぬ彼女の弱き心の叫び。孤高な少女のか弱き声が届いた時、政近の心は停滞を越え動き出す。まるであの日、アーリャが惚れた背中を再演するかのように。

 

「お前が望むなら、俺が全力でお前を生徒会長にしてやる。これ以上お前を一人にはしない。これからは、俺が隣でお前を支える。だから・・・・・・黙ってこの手を取れ! アーリャ!」

 

停滞を越えたその心は熱く。駆け出した心は、取り戻した熱と新たな熱を宿して、彼女の隣に並ばんと手を伸ばす。それこそ、まるで「主人公」のように。

 

気も張らず、お互いに全てを明かし共に並び立つ。その様を現す言葉は只一つ、「ベストパートナー」こそが相応しい。

 

ヒロインが可愛く、主人公も惚れられるに相応しき熱さと格好良さがあり。更には脇を固める者達も青春くささと人間らしさをこれでもかと出している。

 

だからこそ、この作品は正に「生きている」。瑞々しくて甘酸っぱくて温かい、そんな息吹が感じられるからこそ面白いのだ。

 

青春ラブコメの一つの究極形、至高にして至極。私はそう太鼓判を押したい。

 

王道な青春ラブコメが好きな読者様、もとい全てのラブコメ好きの読者の皆様にお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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