読書感想:鎌倉源氏物語 俺の妹が暴走して源氏が族滅されそうなので全力で回避する

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は恐らく学校で行われる歴史の授業で様々な世界の偉人について学習されてきたと思われるが、果たして貴方が習ってきた世界の偉人の人物像は正しい物なのであろうか。それはもはや確かめようがない。だってどんな人物であっても実際に接して見なければ人間性なんてものは分からず、既に遥か昔に死した偉人の人間性は、遺された資料から推測するしかないのだから。

 

 では、この作品における偉人達は一体どんな性格で人間性なのであろうか。

 

そも、源頼朝ってどんな人間なのだろうかと聞かれるとすぐには答えられぬかもしれない。幕府を開いた源氏の棟梁、くらいの認識でしかないかもしれない。実際私もその程度しか知らぬ。

 

だが、武士とは勇敢なものであるというイメージはあるかもしれない。しかしこの作品における源頼朝(表紙右上)はドが付く程のビビりである。そして乗馬も苦手という、おおよそ武士の棟梁らしからぬ性格であった。

 

武士たるもの常に勇敢、威風堂々。心の内に温泉地で隠居したいと言う細やかな願いを隠しながら、ハッタリと知恵と機転で周囲の勘違いを積み重ねながらもなんとか棟梁を勤める頼朝。

 

しかし、平氏との決戦を前に事故で落馬し命の危機に見舞われた時。死後の世界との狭間で少し前に死んでいた平清盛から、頼朝は未来の可能性を見せられる。

 

それはこのまま平氏が滅亡してしまえば、身内の暴走により源氏もまた一族族滅の未来を辿ってしまうという事。裏で糸を引いているのは、武士による世を望まぬ上皇である事。

 

そしてその事態の鍵となるのが、頼朝の「妹」であり戦争の天災、もとい天才、義経(表紙中央)であるという事。

 

「命を惜しむな、兄上のために!」

 

家族の愛情に飢えるからこそ超絶ブラコン、更には戦闘の天才であるからこそ常勝不敗。而して彼女の暴走を止めなければ、源氏は族滅の未来を辿る。しかし知ってしまった未来の可能性を誰かに話す事は出来ない。

 

 そんな状況の中、ヤキモチ焼きで嫉妬深い妻、北条政子(表紙左下)に嫉妬されたりしながらも、義経とその部下達個性的すぎる面々の扱いに四苦八苦しながらも、平家を生かす為に模索を続ける頼朝。

 

立ち塞がるのは木曾義仲を始めとした癖が強すぎる敵達。義経との仲たがいを誘発させ、武士達を滅ぼそうとする黒幕の思惑。

 

「人生は夢だよ義経。いいんだ。いずれ、ここにいる皆は死んで土に還る。だから、生きているこの瞬間を大切に生きればいいんだよ」

 

だが、負けられない。全ては滅亡の未来を防ぐため。そして義経達大切な仲間達を失わないために。時に知恵と機略、ハッタリだって用いて。自分に出来る戦いを精一杯、頼朝は戦い抜く。

 

だからこそ熱く、家族の絆が温かく。ドタバタの中にそんな温かさがあるからこそ、この作品は面白いのである。

 

ドタバタな歴史ものが好きな読者様、曲者揃いな登場人物が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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