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読書感想:スパイ教室03 《忘我》のアネット - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻である三巻まではクラウス達「灯」は敵である謎の組織、「蛇」を追いその尻尾に喰らいつかんとばかりに迫る言わば攻勢に立つ立場であった。だがしかし、攻めもあれば守りもあるのはやはり当たり前の事実であり、攻撃だけでなく防御もまた肝心な事である。そして、防御側に回るという事はそれだけ敵にとって、強大な脅威へとなっていくという事である。
「蛇」の行方を追い、「灯」の全員で潜入するのは海を越えた他国であるムザイア合衆国。今までの何もかもが無い、そしてコネもない未知なる場所。
その場所で待ち構えていたのは、「蛇」によるスパイ狩り。その先鋒として襲い掛かるのは、謎のスパイであり数で攻め寄せる「紫蟻」。そう、今巻は今まで攻めるばかりだったのが、何のコネも仕込みもない異国で守勢に回ると言う、本当の意味で「灯」の面々の力が試される展開なのである。
「灯」全員の指揮を取る事になったのは、優艶なるスパイ、色仕掛けを最も得意とする「夢語」のティア。前巻、敵にこてんぱんに叩きのめされ、スパイとしての根底をこれでもかと折られてしまった彼女。
本当に自分でいいのか、そんな感傷に囚われている暇なんて在りはしない。状況は常に流動的、だからこそ前に進むしかない。彼女は再起する事を求められる。その中で彼女は触れていく。自分が憧れたあの背中、「紅炉」。誰よりも英雄であろうとした彼女が遺したもの、そして彼女の想いに。
「いつだって、あたしたちが本領を発揮するのは―――攻める時なんだぜ?」
三か所で同時に展開するスパイ同士としての抗争。反撃の幕は確かに上がった。
そして全ての条件は整った。かつて憧れの存在が死した場所。英雄たる条件は自分にだってある。
「私が―――英雄が来たわ」
自ら踏み出し高らかに告げた瞬間。本当の意味でティアは一歩を踏み出し、英雄の跡を継いだのだ。彼女とは違うやり方で。全てを受け止め赦し、誑かすという英雄として。
だが、「紅炉」と彼女は違う。ティアは自分一人で戦う事は出来はしない。
「―――助けて、先生」
「助けるよ」
call your name。だからこそ彼女は彼の名を呼ぶ。そしてあの日とは違い、彼は駆けつける。全てを終わらせる為に、決着をつける為に。
さぁ、今度の仕込みと「嘘」に貴方は騙されるだろうか、それとも見抜けるだろうか。
一つの戦いの一時の決着。だからこそ全員で。そんなオールスター戦ともいえる戦いが繰り広げられる今巻。
シリーズを楽しまれている読者様は是非。この機会に読みたいと言う読者様も是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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