読書感想:一日百回(くらい)目が合う後輩女子マネージャーが想っていること

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は部活動と言う物に青春を賭けられた事はあるであろうか。仲間と時にぶつかり合い、切磋琢磨し。大きな一つの目標の為に皆で頑張る。それは正に青春の香りのするかけがえのない一時である。そんな時間を、画面の前の読者の皆様は過ごされた事はあるであろうか。

 

 

とある高校のバスケ部、全国大会にはまだ一度も出たことは無いけれど、それでも頑張り日々汗を流す彼等。その一員である少年、直輝。彼は二年生であるが万年補欠であった。しかし彼は別にバスケの技術が未熟、という訳ではない。彼が万年補欠の原因、それは身長不足というどうしようもない理由。更には筋肉もつきにくいという、バスケの神様がいるのならとことん嫌われてはいないかというハンデを彼は抱えていた。

 

「あ、あの先輩、これをどうぞ」

 

 けれど諦められぬ夢がある。素質がないなら努力で補うと言わんばかりに日々居残り練習に励む彼。そんな彼をどこか熱っぽい目で見つめる影が一つ。その名は真耶(表紙)。男子バスケ部の美人マネージャーとして有名で人気も高い彼女である。

 

「ま、マネージャーとしての務めですから!」

 

そんな言い訳染みた文句と一緒に、何処か直輝の事を特別扱いするかのように。個人的な連絡先を聞き出すことに始まり、わざわざ連絡事項を教えに来てくれたり。更には嫌な顔一つせず自主練習に付き合ってくれたり、風邪を引いたら看病にきてくれたり。精一杯に、彼の事をまるで内助の功と言わんばかりに支えてくれる彼女。

 

 

 さてここまで書けば画面の前の読者の皆様ももうお分かりであろう。疑いながらも直輝だけが気付かぬ、けれど我々読者からすれば一目瞭然。何を隠そう、真耶は直輝にベタ惚れである。これ以上ない程に惚れ込んでいるのである。何故彼女は彼の事がこんなにも好きなのか。それは物語の始まる数年前、彼女はある意味彼に救われていたからである。

 

誰も自分の事を見てくれなかった、聡明と言う外面だけ見て自分を見てくれなかった。でも彼だけは見てくれた。彼が見てくれたからこそ、自分を少しだけ変える事が出来た。

 

「・・・・・・それも、他ならないあの子のおかげなんだよ」

 

そしてその子の事は、直輝もまた覚えている。名前は分からぬけれど、目の前の彼女があの時の彼女だとは気付かぬけれど。それでも彼女を通して自分にかけた言葉は覚えている。彼女がいたからこそ、自分もここまで頑張れたのである。

 

 

 直輝の幼馴染二人や真耶の妹と言った個性的な面々に見守られ、中々始まらぬけれどそれでも少しずつ、確かに進んでいく。熱血ものな中に確かな甘さのあるこのラブコメ、実に面白い。

 

アツい所もあるラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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