さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方の周りには暫く会わない間に一見すると分からないような劇的な変化を遂げられた方はおられるだろうか。その人に会った時、一見して誰か分からず混乱されたことはあるであろうか。
春、それはもう言うまでもないかもしれないが始まりの季節である。とある高校の入学式の帰り道。主人公である少年、照彦に声をかける一人の少女がいた。
彼女の名前は六華(表紙右)。元気いっぱい、一途でハイテンションな女の子であり、照彦と三年ぶりに再会する幼馴染の少女である。
が、しかし。照彦は声をかけられた途端、混乱の極みに陥ってしまう。
それは何故か。何故ならば、彼女は昔は大人しめの楚々とした少女と言う感じの子(表紙左)であり、今の姿とは似ても似つかぬ姿だったからである。
「あっはー! テルくん、過去は振り返っちゃ駄目ですよ! 今を生きましょう! ところでせっかくの再会ですし、昔の思い出話でもしません?」
「前後の分で矛盾するなよ」
確かに自分も、自分を変える為に中学時代はバスケに励み、変わったという自負があった。しかし彼女は、全くの別人であった。
訳も分からずぐいぐい迫られ、思わずツッコミをしたりする中。六華は照彦に宣言する。今度こそは私に惚れさせてみせる、と。
だがしかし、照彦はそれは無理だと語る。それは何故か。何故なら、彼は既に六華の事が好きだったからなのだ。
確かにあの日、こっぴどくフッてしまった。だけど心の中には後悔があった。ずっと忘れられなかった。
それは彼女も同じだった。一度フラれた程度では諦めきれなかった。だからこそ、彼を追いかけてここまで来た。
ここまで読んでいただけた画面の前の読者の皆様ならもうお分かりであろう。この二人、既に両想いである。だが、形的には両片思いと言ってもいい状態なのである。
三年の空白、その欠落を今からでも取り戻さんとするかのように、照彦の家を訪ねたり、二人で一緒に出掛けたり。
そんな日々の中、照彦は知る事となる。六華の今の本当の姿を。ずっと彼女に無理をさせてしまっていた事を。
だけどそんなすれ違いを越えて告白により向き合ったかと思えば、六華の逃走によりまたすれ違ってしまって。
そんなあと一歩、そこがもどかしい二人のラブコメが、全体的にまるでスラップスティックのように、体当たりのように、テンション高く繰り広げられるこの作品。
ハイテンションに任せて読みたい読者様、笑えて温かくなれるラブコメが好きな読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。