さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はもし、タイムスリップをするのであれば、どの時代のどの世界へ行きたいであろうか。そして、もし転移してしまったのであれば、果たしてその世界で生きていく事は出来るであろうか。
正直な所、リアルに異世界転移やタイムスリップを描いていくと中々に何処も厳しい環境であるという事が想定されるのは確かである。では、一体どこの世界であれば転移しても大丈夫なのであろうか。
その一つの可能性、結果的に大丈夫だった例となるのがこの作品である。
現代日本の普通の高校生、ただし実家の影響で剣術や陰陽術に関する知識と力があり更には歴史好き。そんな(恐らく)普通の少年である主人公、真琴。
彼は修学旅行中、唐突にタイムスリップしてしまう。その先は何処か。そこは、正に歴史の大転換点。今話題の大河ドラマ、「麒麟が来る」でも何れ描かれるかもしれない今なお謎の残る歴史上の大事件、本能寺の変の現場である。
燃え盛り焼け落ちようとする本能寺、今まさに命を取られんとする戦国武将、織田信長。
織田信長、その名は戦国武将の中でも一番有名な武将の一人であろう。そして某FGOを始め様々な媒体でモデルとなり、様々な人物像で味付けされている人物の一人である。
が、しかし。某戦国恋姫やFGOとは違い、この作品における信長は史実通り男性である。そして、伝承通りの好奇心の強さ等の一面を見せながらも、そこまで残虐ではなく豪放磊落という言葉が似合いそうなタイプの人間である。
真琴の助太刀により魔が憑りついていた明智光秀は討ち果たされ、本能寺の変より信長は見事に生還する。
ここまで読んでいただけた画面の前の読者の皆様であればもうお分かりいただけただろう。本能寺の変を乗り切り信長が生き延びると果たして何が起きるのか。それは、全く誰も知らぬ歴史が幕を開けるという一つの厳然たる事実であり、過去を改変する行いを図らずも始めてしまったという事である。
そして未来の日本の知識を持ち、更にはこの先の歴史で起こり得る事件の知識を持ち。おまけに武芸に秀で頭も切れる。
そんな、この時代においては多芸である真琴を信長が手放すはずもなく。
「常陸が申していたであろう、鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」
彼を客人として召し抱え側に置き、戦国武将好きである彼の意見を基に登用を進め、幕府を開き将軍となる。
その傍ら、浅井三姉妹の長女、茶々(表紙)を始めとする女の子達と仲良くなりながら、自分の持つ知識で何かを創り出していく。
この作品はそんな作品であり、戦国時代という歴史を作り替え、まだ見ぬ世界を切り開きながら、自分の理想の世界を作っていく。
そんな作品であり、価値観の全く違う世界に置いて真琴が成長していく様も面白い、肩の力を抜いて楽しめる硬派過ぎないよい歴史の物語を描く作品である。
歴史ものを読んでみたい読者様、可愛いヒロインに癒されたい読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。