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読書感想:ダークエルフの森となれ ―現代転生戦争― - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻からイラストレーター様の交代というイベントを経験した今作品であるが、画面の前の読者の皆様は前巻と今巻、どちらの方がお好みであろうか。個人的な感想としては、ニリツ先生=褐色というイメージが何処かにあるので、これはこれで良いと思う次第である。
しかしそんなイベントを経れど、この作品でやる事は変わらない。生き残りを賭けた魔術種同士の死闘はまだまだ続いている。なれば練介とシーナのやる事は変わらない。敵に備え、敵が現れたのならば殲滅する事、それのみである。
「好きです。私と付き合ってください」
画面の前の読者の皆様、何だかシーナの台詞にしては言葉遣いがおかしいと思われただろうか。それもその筈、このセリフはシーナのものではなく、練介に諍いを仲裁され彼に惚れた整備科の下級生、万離からのものである。
「へぇーえ。つまり・・・・・・浮気の報告ってことか?」
「違う。全然違う。むしろ俺にやましいことは何もないっていう報告だ」
何処か拗ねたように、あるいは焼きもちを焼いたかのように。だけど練介の心は何があっても変わらない。何故なら既に彼はシーナの眷属であり、全ては彼女の物だからである。
けれど、彼女は別の意味で練介の心をかき乱す事となる。何故ならば、学校に潜入していた魔術種の一体、その眷属こそが彼女であったから。
その主の名にして新たなる敵となる魔術種の名はギライザ。一体ずつは弱いけれど、群れる事で力となり、全ての個体はただ一体の女王へと奉仕する種族、その名はゴブリン。そして一人でありながら無数という特性を持つ眷属こそが万離である。
ゴブリン達の望むもの、それは「全て」。欲しいと言う欲望のままに、何もかもを盗んで見せる。例えそれが形のないものだとしても。その在り方を示すかのように、万離もまた何処か壊れたように練介へと迫る。
「見ててほしい。私は駄目で愚図だけど、頑張るから、見てて。頑張るのを、見てて・・・・・・」
その根底にあるのは愛への渇望と果て無き孤独。まるで成し遂げられなければ死んでしまうとでもいうかのような、恍惚で狂的な懇願。
「お前のことが、少しだけわかってきたからさ」
「悪いな。お前の気持ちには応えられない」
その懇願、自分と「同じ」少女の懇願を受けて尚。練介は戦う、眷属として。彼女を倒すべき敵として、眷属としての新たな力の形を目覚めさせながら。
前巻の黒さとまた違う黒さ、壊れ人間を逸脱しながらも、人間臭さを失わぬバケモノ達の苛烈な戦いはまだ、終わらない。
前巻を楽しまれた読者様、ダークなSFファンタジーがやはり好きという読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。
ダークエルフの森となれ2 -現代転生戦争- (電撃文庫) | 水瀬 葉月, ニリツ, コダマ, 黒銀 |本 | 通販 | Amazon