読書感想:君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくり返る

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問:時計と言われて思いつく時計は?

 

答:逆転時計(某ハリポタより)

 

さて、この作品の作者である零真似先生と言えば、スニーカー文庫で独特な世界観を前面に打ち出した作品を数多く手掛けられていた作者様であられるが、この作品は一体どんな作品であるかと聞かれれば、一言で答えてしまえば、セカイ系と答えるべきであろう作品である。

 

舞台となるのは何処か不思議で何故かふとした寂寥感のある世界。この世界においては天空に浮かぶ巨大な時計「世界時計」を境に二つの世界に別たれている。

 

空の上、天獄の住人である人間の少女、ファイ(表紙中央)。空の下、地国の住人である死者の少年、デッド(表紙左上)。その日、空からファイが降ってきてデッドと出会った事で、この作品は始まっていくのだ。

 

生者と死者。天と地。本来ならば出会いもしなかった、互いと言う存在がいる事も知らなった。だけど出会った、出会ってしまった。

 

本来ならば出会う事もなかったはずの二人。生きる世界が違う筈の二人は出会い、共に冒険へと踏み出していく。

 

君がいたから知れた、こんなにも星空は綺麗だということ。

 

君がいたから知った、自分の知らない世界にはこんな世界が広がっているという事を。

 

天獄と地国、二つの全く違うようでどこか似ているかもしれない、そんな二つの世界を行き来し巡りながら知っていく世界の素顔。

 

 

世界はこんなにも大きくて、この大きい世界で二人の関係はこんなにもちっぽけなもので。

 

お互いを隔てるものは全く違う常識と世界観、誰しもの心を知らぬ内に縛る諦念。

 

だけど、それでも止まれない。知りたいという情熱がある。

 

二つの世界のバランスが気紛れにひっくり返ろうとも、何度ひっくり返っても。この胸に宿った情熱は消えない、憧れは止まらない。

 

だからこそ、例え世界の壁を前にしても進んでいける。世界が相手だとしても、立ち向かっていける。

 

「今度こそ一緒にいくわよ。世界の果てに」

 

そして、だからこそ。一度離れたその手にもう一度の奇跡が舞い降りる。また再び、新たな冒険の物語を始められるのだ。

 

セカイの謎なんて知った事ではない、今この目に映るのがセカイの全てである。だからこそ、知りたいという憧れと情熱は止められない。

 

再びの言になるが、この作品はセカイ系に分類されるであろう作品である。そして同時に、二人の内心と心が交錯する、情熱と恋のパトスのままに描かれた、不思議と胸が熱くなる面白さに満ちている作品であるのだ。

 

心のどこかで感動を求めている読者様。言葉ではなかなか言い表せぬ不思議な作品が読みたい読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

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