前巻感想はこちらから↓
さて、この一週間ほどの間につらつらと感想を記事にしてきた、宮本サクラという一人の幼馴染の女の子の可愛さに焦点を当て突っ走ってきたこの作品。三巻では一体何を描くのか、と読者様は聞かれるだろうか。それに対する答えを述べるなら唐突に、そして確実に世界の破滅が始まるという事である。
そう、世界の破滅である。これまで作中で散々仄めかされてきた、終末戦争が導く世界の破滅。それが本格的に始まるのがこの三巻なのだ。
ラブコメの主軸としては、期せずして団体旅行となってしまった熱海旅行を舞台とし旅行という非日常でサクラのテンションが上がったり、スマートボールに皆で挑んだり、射的に挑む少女達を撮影しようとしたライタがリキヤにお持ち帰りされたり。
賑やかに過ごす非日常。だけど、確かにそこに世界の破滅は迫っているのだ。
この三巻では今巻だけの仕組みとして、時系列の前後とワープという仕組みが採用されている。そして、その前後の中でモブである一般人の目を通して語られる静かに迫る危機が、何処か恐怖感を煽ってくるのである。
空回りを続けながらもサクラ達が辿り着いた、旅の締めくくりとなる花火大会。
そして、遂に現れる世界の破滅、それを齎す巨人の姿。
「でもこれはあたしの本当」
サクラの接吻は崩壊を防ぐには足りず、世界は一度崩壊し、歪みを分岐で飲み込んで無理矢理に物語の流れは変えられる。その先は時の女神も知らぬ、確実に何かが起きる新たな世界。
それでもサクラは何も言わぬ、それはなにゆえか?
それは、彼女の正体こそがこの作品の鍵となるから。文字通りヒカルとサクラの恋の行方がこの世界の行方を左右するからだ。
前巻までとは違い、何処か背筋が冷えるかのような不気味さと危機感を孕ませてくる、この作品が只のラブコメではないと知らしめてくるのがこの巻の役目。そして、三冊にも渡るプロローグを経て、この作品は本格的に始まっていくのである。
本当の意味での始まりとなる四巻以降も楽しみである。画面の前の読者の皆様も是非。