さて画面の前の読者の皆様、突然ではあるがこの作品をうまく表す語彙を持っていない私を許してほしい。ひとまず言えるのは只一つ、このラブコメは半端ではない。
まず題名を見た時、貴方は気付かれるだろうか違和感に。カノジョ、これは何もおかしい事ではない。そこに妹がついている。これは一体どういう事なのか。
この妹、というのは主人公である博道の初めての彼女である晴香、その生き別れの双子の妹である時雨(表紙)である。そして彼女は、今になって出来た、博道の義理の妹である。
そう、義理の妹である。そして、双子と言うのが一番の厄であり物語を複雑にしている点なのである。
奥手な晴香、その彼女とそっくりだけど性格は真反対、二人きりの時は博道を次々とからかってくる時雨。
「おにーさんは悪くない、悪くないんですよ」
その誘いはまるで猛毒のように。ふと気が付くと心に沁み込み犯してくる甘い猛毒のように。
その猛毒の誘いを振り切り、奥手な彼女と二人のペースで愛を育む博道。
それだけであれば、この作品は平凡なラブコメであった。しかし、そんな事は許さないとばかりに攻め込んでくるのがこの作品なのである。
恋だの愛だのに憧れを抱けぬ時雨の心。しかしその心に、衝撃の光景が齎したのは突然の目覚め。
これを「恋」と呼ぶのなら。それは遅すぎたのだろうか。周回遅れだったのだろうか。
そんな事は関係ない、そう言わんばかりに一度目覚めた心は止められず、執着は心を炎で燃やす。
「今度は、冗談じゃないですよ」
拒んでしまえれば良かった。だけどもう遅い。猛毒は彼の心を確かに犯した。
そう、恋愛は綺麗なものだと私達はいつから錯覚していたのかもしれない。この作品で繰り広げられるのは、綺麗なだけではない、恋の暗くて重い、だけど歪んでいるように見えて真っ直ぐな恋のお話なのである。
凡百のラブコメに飽きた読者様は是非。忘れられない一冊になるかもしれないので。