突然ではあるが画面の前の読者の皆様、もしあなたの目の前に突然未来から自分の子供がやってきたら貴方はどんな反応をされるだろうか。
そんな突然、謎の状況に巻き込まれてしまったのがこの物語の主人公、郁(表紙左)であり、未来からやってきた娘でありヒロインが燈華(表紙右)である。
そして、この作品の見所の一つであり、魅力の一つがヒロインである燈華の可愛さである。
そもそも未来からやってきた娘と言われても混乱するだろう。実際主人公である郁もかなり混乱していたのが事実である。
が、しかし。この燈華という娘がパパ大好きで甘えん坊、天真爛漫なアホの子であった。
終始高いテンションで郁を振り回し、漫才めいたやり取りを繰り広げながらもママを探して四方八方に暴走する。そんなおてんば娘が放っておけない。そう、燈華が燈華な性格だったからこそすぐに郁とこの時代でも親子になれたのである。
第二に見所かつ魅力なのは、そんな彼女に振り回されながらママを探す、郁の父親として男としての成長である。
彼はとある過去の出来事から人を好きになる事が出来ない。好きになるという気持ちを抱けぬまま、特に何も変わらぬ平凡な毎日を過ごしていた彼。
そんな彼が燈華との出会いと触れ合いをきっかけに、ずっと自分の周りにいてくれた少女達と改めて向き合い、彼女達をママ候補として見ていくようになっていく。
いつもお世話してくれていた、母親のように支えてくれた瑛理子から受け取った寛容と癒しという形の好意。
中学のころから親友で、義理の親子として心近づけた莉生から受け取った歪だけど真っ白な好意。
何もかも見せ合ってきた、いつも側にいてくれた凜々花から貰った家族としての好意。
今まで側にあったのに気づけなかった。だけど今、気付いたから。答えをまだ出せずとも好きという想いは取り戻したから。
そして燈華の我儘を受け取り叶えると約束した、それは父親としての好きという形。順番はあべこべになってしまったけど、父親になった郁は好意と言う感情を思い出し一歩踏み出した。そんな娘との触れあいで成長した彼に賛辞を送りたくなるのである。
「すぐに会えるよ。俺たちの、未来で」
未来へ帰る燈華を見送り漏れ出た愛の言葉、そして彼女と出会う未来へ進むという一種の誓約。ここから彼等の未来は本当の意味で始まるのだ。
この作品に単純なラブコメを期待するのは間違っているのかもしれない。特にこの巻には。だけど読み終えた時、きっと画面の前の読者の皆様も大切な何かを貰えるかもしれない、そんな作品である。