エモさとは ここにあるのよ しおあまに
さて、画面の前の読者の皆様に一つ質問であるが、皆様はインスタグラムはやられているであろうか。インスタ映えとやらを意識し写真を撮られているだろうか。
そう、インスタ映えとは今流行りであり、若者が熱中するもののひとつである。そして、熱中するものを通して繋がっていくのがこの作品の主人公、押尾君とヒロインである佐藤さん(表紙)である。
一見すれば完璧な美少女、しかし周りの全てに塩対応な高嶺の花。だけど一皮むいてみれば、そこにいたのはコミュニケーションに不器用な普通の女の子。
そんな彼女がイメージを変えたいと目を付けたのがインスタグラムもといミンスタグラム。そして、宣伝アカウントとは言えフォロワー数5000人を叩きだしたのが押尾君。
更にここで見逃せず忘れてはいけない要素が一つ。それは押尾君、そして佐藤さん共に相手が初恋の相手だという事である。
好きだからこそ写真撮影の為とは言え距離を詰められて思わず慌てる佐藤さん。相手の思いもかけない告白に驚かされ思わず塩対応してしまって、自己嫌悪に陥ってしまったり。だけど彼の事が大好き過ぎて、思わずのぼせるまで彼の店のアカウントを見てしまったり。
彼女に負けじとばかりに、彼女の一挙手一投足にときめいたり距離を取られてこの世の終わりかと言わんばかりに落ち込んでしまう押尾君。だけど大好きという想いは本物だからこそ、大人にだって啖呵を切ったり。
この二人は天使か何かなのだろうか? 思わずそう言ってしまいたくなるほどに可愛らしい、正に初恋の青春の時間を共にしている二人なのである。
そして見逃せない点がもう一つ。それは二人を取り巻く人々がいずれも魅力的であり、味方してくれる人達ばかりという事である。
からかい悶絶しながらも応援してくれる級友達。筋肉は傷つけあって大きくなる、だから傷つけと背を押す押尾君のお父さん、怜悧に見えて実は不器用で過保護な佐藤さんのお父さん。
彼等がいるからこそこの作品は面白く、決して二人きりの世界ではないからこそ、本当の意味での青春が眩しいのである。
「私も、押尾君が好きです」
彼女の前では、まだ格好つけて、いたかった。
二人乗りの自転車の上で告白された時、彼の中によぎった思いを見てみるがよい。敢えてこの区切り方をしている事で一杯一杯の、余裕がないように見えて行間に幾百もの感情が詰められているのが見えてこないだろうか。
一巻にして恋人同士、ならばきっとここからは甘いだけの筈。是非画面の前の読者の皆様も共に砂糖を吐き出す同士となってもらえないだろうか。