今、どうしても叶えたい願いはありますか。その願いの為なら大切なものを捨てる覚悟はありますか。
幼馴染の妹、それは二人をいつも近くで見てきた存在。そんな彼女が再び現れて迫ってきたら。唐突に始まるいつもとは違う非日常。小悪魔を必死に演じる子犬な彼女に振り回される日常の中、主人公は彼女の想いに迫っていく。
だがしかし、物語はそんな簡単には進まない。「今はまだ」、本当に重要なのはその言葉の方の意味だった。
そもそもの舞台装置として語られた、空から落ちてきた願いを叶える星の欠片。だけど願いには代償が付きまとい、二番目に大切なものを奪っていく。
そう、この物語の主人公である伊織はその歪な奇跡を既に目の当たりにした者だった。ヒロインである灯火は今まさにその奇跡を願っていた者だったのだ。
そして灯火は幼馴染の妹、つまりは姉がいる。その姉こそが願いの対象だった。
この作品はほんの少し不思議なファンタジーなのかもしれない。
だけど、確かにこの作品はラブコメなのだ。愛する人を失った同じ痛みを抱えた二人が醜いまでのエゴをぶつけ合い、過去と今の狭間に立って。そして互いに手を伸ばし、大切な存在を選び取る。少しの偽善と醜いエゴと、確かに誰かを思う慕情を交差させ合うラブコメなのである。
この作品を読んだら胸が締め付けられるかもしれない、心が痛くなるかもしれない。だけどそれを乗り越えた先にある恋の甘さが心に灯火を運んできてくれる物語なのである。
残る五つの欠片に願われる願いが語られることを切に願う次第である。