人生はまるでゲームのよう、そう言ったのは誰であっただろうか。ところで画面の前の読者の皆様、ギャルゲーをプレイした経験のある読者様は是非手を挙げていただきたい。お勧めのゲームを聞きたいので。
さて、この作品の主人公である乙綺はヒロインに憧れるモブ気質の普通の高校生である。しかし、主人公としての素質は秘めた未完の主人公である。
そんな彼が憧れているのが、才色兼備、文武両道なヒロイン、実衣奈(表紙左)であり、その彼女の本心である幽霊のような存在、精神体がミーナ(表紙右)である。
自分にしかミーナの姿は見えないという事で依頼されたのは、実衣奈に「接触」してミーナを元に戻す事。その為に始まる、彼女を味方につけてのヒロイン攻略。
画面の前の読者の皆様、貴方は見た事があるだろうか。ヒロインを味方につけてのヒロイン攻略、そんな奇想天外なラブコメを。
しかし、奇想天外に見えて、この作品は真っ直ぐなラブコメなのである。
ミーナの為と言えど、今のままでは彼女には届かない。だからこそ、少しずつでも成長して。
ミーナに明かされ、誰も知らない彼女の素顔を垣間見たりして。
正しく「秘密の関係ラブコメ」であり、珍妙に見えて王道なのである。既に、この一冊だけでほぼ完成しているといっても過言ではないのである。
そう、これは乙綺少年が自分を変えて成長していく、少年の成長物語としての側面もある、ラブコメとして一つのお手本と言っても過言ではない作品である。故にこそ、面白い。
「でも、もう一つのギャルゲーは神作だった」
明かされた意外な事実と接触の先、二人きりで向き合った所で最後の言葉を。この場面が本当に美しいので、是非ともここまで辿り着いてもらいたい。
真っ直ぐなラブコメが読みたい読者様は是非。きっと満足できるはずである。