読書感想:隣のキミであたまがいっぱい。

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君との距離は二メートルよりも近く、その距離の中は二人だけの世界。

 

二メートル以内、それは最早パーソナルスペースの内側へと軽々と踏み込んでいる距離。そんな距離に何故二人はいるのか。

 

ヒロイン、如月那緒は他人の思考が読めてしまう少女。読めるではなく読めてしまう。それは他人の正負も定かではない思考に常にさらされてしまうという事。

 

そんな厄介な能力を何故か自分だけへと向けさせ制限できる能力を持つ主人公、宇佐美北斗。

 

そう、思考が聞こえるという事は隠そうとしても隠し切れない、全てが強制的に曝け出されるという事。

 

なのに主人公、北斗は嫌な顔一つしない。それどころかいつも通りに軽口を叩き、変わらぬ態度で接してくれる。

 

それこそが彼にしか出来ぬ事。果たして画面の前の読者様にそんな事ができる人が幾人いるだろう。

 

だからこそ彼が彼女の特別になるのは簡単な事だった。ずっと一緒にいるから彼の思考だけが聞こえる。だから全部わかる、お互いが特別になっていく。

 

夏休みや体育祭、文化祭といった何でもない青春のイベントをほぼ二人きりでお互いの視点を交換しながら。

 

だからこそ、二人の心が読者には筒抜けであり、それ故に甘さが二乗化で更に際立つのである。

 

一番先に思いつく友人は彼、何でもない些細な口調から気分が分かってしまうのは彼女。

 

周りとぶつかり喧嘩したり。お互いしかいなくなり自然と二人きりに。

 

そんなにシリアスではないけれど、燃えるような感情がほぼない、まるで凪いだ湖面のように静かな日々。

 

だけどそんな静かな日々を積み重ねる事で仄かな優しさが静かに心に染み入っていく。つまり、ちょっと不思議だけれどこれはまごう事無き青春であり、間違いなくラブコメであるのがこの物語である。

 

心に一服の落ち着きと、まるでカフェオレのようなちょっと苦くてほんのり甘い物語が欲しい読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。