読書感想:帝国第11前線基地魔導図書館、ただいま開館中3 疾駆せよ移動図書館アーキエーア

 

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読書感想:帝国第11前線基地魔導図書館、ただいま開館中2 王国研修出向 - 読樹庵

 

 さて、戦争なんて腹が減るだけである。かのロシアとウクライナの戦争も長く続いているがいい加減飽きたりしないものなのだろうか。戦争と言うのは長く続けていれば疲弊を続けるのは明白、先細りしていくのは間違いないであろう。だが戦争と言うのは技術の発展を招くものである。上記の戦争の初期は戦車同士の激突が主であったのに今や戦争の主役はドローン、というのも技術の飛躍的発展、のせいなのかもしれぬ。

 

 

さて、そんな現実の情勢はさておきこの作品でも長い間戦争が続けられているのはもう画面の前の読者の皆様もご存じであろう。そんな戦争も今巻で一つ、完結を迎える訳で。最後まで駆け抜けていくのが今巻なのだ。

 

「でも・・・・・・あの戦闘から、静かになりましたよね」

 

前巻、カリアの王国出向からもう一年以上。協定は未だ有効、泥と血にまみれた戦争はまだ続く。しかし確かに変化した事はあった。世界から魔力が失われゆく中、人間側の連合国では機械化の波が一気に加速し。より魔王軍との戦いが膠着状態になって、経済の衰退がはじまっていた。しかし一司書であるカリアには何も出来ず。そんな彼女の元に届けられたのは、兵員輸送車を改造した移動図書館、アーキエーア。それと同時に詳細不明の新たな魔導書の修復も押し付けられる中、一月も立たずにやってきた任務。それはカリアとエルトラスの二人でアーキエーアで複数基地を経由しながら大陸中央北部の前線基地へ向かえ、というもの。自分はともかくエルトラスが選ばれた理由にきな臭さを感じ、それは最初の行きつく基地で明かされる。

 

「なんなんだよ! 揃って黙ってやがって!」

 

それは皇女であるクレオ。彼女がエルトラスの名前を借り同道する事になり。各基地に寄贈と言う形で本をばら撒きながら進む中、アリオスまで合流してきて。よりきな臭さを増す中、旅は目的地に向かい続く。

 

「友人だけでの旅行なんて、初めてですもの」

 

それはクレオにとっては、自分が作り上げてきたものを見届ける旅行で、カリナのいつもの姿を目撃する旅行で、友人達だけでの初めての旅行。まるで学生の様に楽しむ中、辿り着いた目的地。そこで明かされるのはこの旅の目的。それは魔族側の王太子、カールヴォスから申し込まれた停戦交渉の為ということで。

 

「君達の技術は、ついに魔王陛下をすら恐れさせたのだ」

 

そこで再会したのはカールヴォスの側近となっていたグデンヴェル。明かされた戦争の始まりの理由、それは魔王が魔法で見た未来。人類の爆発的発展を阻む、という目的は達成されていたからこそもういいだろう、というもの。

 

しかし、講和をよく思わぬものがいた。それはカールヴォスのお付きで剣の師匠の鬼人族、イルキューラ。心を変えれず、受け入れられず。「竜焔」という異名で恐れられる上級魔族、タイアヴォンと共に軍勢を率い、講和会場を襲撃してきて。

 

巻き起こる戦い、その中で傷ついてしまうクレオとカールヴォス。死に瀕する中、クレオはカリアに、修復の終わった死者蘇生の魔導書を手にする彼女に告げる。分かっているな、と。

 

「むかしむかし、世界で戦いがあった頃―――」

 

その選択はくそったれな、だけど情勢を読むなら正しいもの。その選択の果て、セカイは平和に向かい歩き出して。 人と魔族が分かり合い新たな時代が始まる中で。いつの時代も図書館にカリア、傍らにアリオスの姿はあるのである。

 

最後まで一気に駆け抜け万感の思い吹き荒れる今巻。最後まで是非。

 

 

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