読書感想:断罪された転生聖女は、悪役令嬢の道を行く! (1)

 

 さて、時に悪役令嬢というのは最近のラノベにおいては見かける事も多くなってきたと思うが、そも本物の悪役令嬢、になるにはどうすればいいのだろうか。やはり重要なのは持ち合わせた素質、であるのかもしれない。人を踏みにじるのを苦にせず、ナチュラルに人の上に立てるタイプ。そんなタイプこそが、本物の悪役令嬢というのにふさわしいのではないだろうか。

 

 

そう考えると、意外と悪役令嬢になるのは難しいかもしれない。ひとかけらでも善性がその心の中にあるのなら、自分の行いに心を痛めるような事があれば。きっとちぐはぐなものになってしまうかもしれない。この作品はそんな、悪役令嬢の対義語と言えるかもしれない存在である聖女。そんな前世を持つ少女、ルナ(表紙左)が悪役令嬢を目指すお話なのだ。

 

前世、一心不乱に人を助けてはきたものの、最後には救った人に裏切られ、偽物という汚名を着せられて火あぶりにて処刑され。 読んでいた悪役令嬢ものの小説、その続きだけが気になるという心残りを残し、その後。気付いた時には彼女の意識が三百年後、の世界の伯爵家の老夫婦の娘として転生していた。

 

「もう誰かが困っていても、絶対に助けたりなんかしない。悪役令嬢に・・・・・・私はなる!」

 

自身の死後、大魔王が食料と資源を求めて攻め込んできて、生存圏を縮小する一方。ひたすら贖罪の言葉を述べ、聖女の復活を望み祈っている、という割と厳しい世界の状況を認識して、一つ決意する。 二度目の人生、好き勝手に生きる。聖女なんかやめる、悪役令嬢になる、と。

 

「私は通りすがりの―――悪役令嬢です」

 

(うぅ・・・・・・私は何も悪くないのに、どうしていつもこんな目に遭うの・・・・・・っ)

 

が、しかし。ルナは人間に絶望し見限っていたはず、その筈なのに。やっぱり聖女としての心は、そう簡単には失われていなかった。公爵家による下種な誘拐事件に巻き込まれれば圧倒的な力で無双し。聖女を探し次代の聖女を育成する学園に入学し、支援の裏方としての道を志すも、この世界でもやっぱり最強の力は、只のポーションすらもエリクサーに変え。 目立ちたくない、その筈なのに。三百年越しにかつてペットだった強大な魔物を従えたり、謎の冒険者、シルバー(表紙右)として活躍してしまったり。何かと騒ぎを巻き起こす中、見えてくるものがある。

 

それは聖女という名は、今も尚縋られるもの。そして、その名の元に勝手に意志を捏造され、その名を利用されているという事。まるでかつての時代、自分が生きていた時代のように。

 

「―――私こそが、聖女様の代行者だ」

 

そんな世界で、専属侍女のローや級友であるサルコと賑やかな日々を過ごしたり。かつての人生での借りがある相手の子孫、レイオスに借りを期せずして返したり。 その中で、敢えて自分で代行者としてその名を背負う。 もう利用させぬために。そして黒歴史を回収するために。

 

そんな、何処かドタバタに溢れた軽く楽しめるこの作品。肩の力を抜いて楽しみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

断罪された転生聖女は、悪役令嬢の道を行く!① (オーバーラップ文庫) | 月島秀一, へりがる |本 | 通販 | Amazon