読書感想:探偵に推理をさせないでください。最悪の場合、世界が滅びる可能性がございますので。2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:探偵に推理をさせないでください。最悪の場合、世界が滅びる可能性がございますので。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を読まれた読者様であれば、理耶の「名探偵は間違えない」というトンデモ能力が世界を書き換え、不条理な答えを実現させてしまうと言うこの作品の概要はご理解いただけているであろう。ではふと、考えていただきたい。この能力があり、理耶が探偵役である以上、この作品、推理、ミステリものになるのだろうか? 

 

 

その問いかけに答えを返すと言うとすれば、なりにくい、と言えるかもしれない。そもそもどうも無視できぬワードは物語の中に散りばめられている。ではどんな方向性に踏み出していくのか、というと。作者様が望まれた、本格カオスミステリエンタメ。そのラブコメの色を強めていくのが今巻なのだ。そして今巻の主役はイリスなのである。

 

理耶のどこか遠くに皆で遊びに行きたいと言う願いに、姫咲が答えた事で実現した二泊三日のゴールデンウィーク旅行。行き先となるのは、「横臥島」と呼ばれる離島。この島には「オウガ様」という、島を守る代わりに生贄を求め、最後には生贄に逃げられ島民に討伐された、という鬼の伝説があった。

 

宿泊場所となる屋敷で、臨時の使用人である執事のハング、双子のメイドのハラワタとサメザメにお迎えされ。一先ず島にある、オウガ様の像を見に行ったり、皆で海で遊んだり。島民とも交流し、親睦を深めると言う名目の元で和気あいあいと過ごす時間。だがしかし、探偵がいる所に事件あり、というのは当たり前。一年に一度、「業落とし」と呼ばれるお祭りの時に不可解な動きを見せる村長。そしてオウガ様の祠が荒らされ、オウガ様の像が立ち上がり。 海岸にて村長が死んでいる、という事件が巻き起こる。

 

「やっぱりここにはあるべきものがない・・・・・・!」

 

事件の謎、それは誰も目撃者がおらず、そもそも祭りの前にはいない人が確認され、全員アリバイがあるというもの。やっぱり炸裂する理耶の迷推理により顕現する鬼。 幸太に託され、解き明かす事件の真実。あるべきものがない、そのあるべきものこそが発見場所の鍵。

 

けれどここからがこの作品の本番。そもそも事件を導いた黒幕により、イリスは攫われ。戦闘後の回復を待つ面々と別れ、幸太は一人イリスを狙う下手人と向き合う。

 

「事件ってものに終止符を打つのはいつだって―――探偵の役目なんだよ」

 

イリスと同じく「真理の九人」の一人、虚構を押し付けてくる下手人。世界の真実を歪める虚構に立ち向かう、それに必要なのは真実を暴く力。そして、探偵の力。

 

取れる手札を使って勝利した先、イリスの物語は一先ず幸太という主人公により決着を迎える。その後に残るのは、意味深なワードと幸太に隠された伏線。 普通の人間、ではない筈と黒幕が断じた、そこには何の意味があるのか。

 

本格的に物語が動き出す今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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