読書感想:すまん! クラスで人気の文学少女がスカートを短くしたのはオレのせいだ



 さて、そもそも人の印象というものは何で最初は決まるのだろうか。まずは外見、その辺りだろう。しかし外見から分かるその人の事というのはどのくらいだろうか。例えば不細工な人でも心は綺麗だったりするし、イケメンな人でも心に闇を抱えていたりする訳で。そう考えると、外見から分かる事って半分以下ではないだろうか。だからこそ人はコミュニケーションを取って、その人の事を深く知っていくという方向性でいくのが望ましい、のだろう。

 

 

それは言うなれば相互理解、という事になるのかもしれない。この作品は様々な事情で相互理解から外れた者達の、変わりたいという思いが交差するお話なのである。

 

気だるげで軽薄そう、ストレス解消に女を殴ってそうなクズ。それがこの作品の主人公、理比斗に張られた印象という名のレッテル。無論そんな事はない。彼自身はごく普通の一般人、なんなら女性経験のない童貞である。しかし好みの外見や服装が何故かそっち方面になり、一昔前に炎上していたインフルエンサーに顔が似ている、というどうしようもない事情もあり。 最早世界から認識阻害の呪いでもかけられてるのでは、というレベルで今までの人生嫌われ続け。 最早あきらめの境地、傷ついた彼の心は凍り付いていた。

 

「理比斗くんのおかげでオトナになれました!」

 

しかし、彼と日常の何気ない場面で出会い、彼に憧れて何気ないアドバイスでがらりとイメチェンしてきた子がいた。その名は葉桜(表紙)。今までクラスではクラシックタイプな文学少女として見られ、崇められていた彼女は理比斗の言葉でイメチェンを敢行し。 師匠として慕ってくる彼女を引きはがす事も出来ず、一先ず関わりを続け、自分だけが知る顔が増え始める中。やはり理比斗に向けられるのは、厳しい視線で。

 

「単刀直入に言うと、キミと友達になりたいんだ」

 

葉桜まで自分の評価に巻き込む訳にはいかぬ、とクラスで演説をぶちかまし。結果的に葉桜の評価は守れるも、自分の評価はさらに下がり。そんな彼に二つの出会い。一つは誤解を謝罪し、友達になりたいと言ってきた級友、財前。もう一つは、何故か彼に宣戦布告してきた隣のクラスのギャルである真唯。葉桜に思う所があるらしい、彼女の本心を尾行して探ってみれば判明したのは、何気ない秘密。何という事はない、彼女もまた周囲の印象に踊らされていた者であり、葉桜に勝手に仲間意識を抱いていたと言う事。誤解を解き、真唯とも仲良くなり。そんな中、葉桜の先導で理比斗の印象を良くさせようと言う動きが持ち上がりそうになり。どうせ無駄だ、といつものように斬り捨てようとして。

 

「大勢に好かれる必要はありません。 でも、だからといって大勢に嫌われて良い理由にはなりません!」

 

だけどそんな心を葉桜は、真正面から否定する。 今まで幾らやってきた、全部無駄だったとしても、今やらない理由にはならない。 諦めたふりして寂しそう、それをいつまでも受け止め続けていていいわけじゃないと。 彼女が真唯も巻き込んで繰り出した一手、その中で明かされたのは理比斗の、皆とは何も変わらぬという只の事実。心からの叫びが、暴露と共に。そして確かに変わり始めていくのである。

 

 

かなり痛ましめな背景の中、ぐいぐい来る甘さが際立っているこの作品。ビターもあるラブコメを読みたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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