読書感想:幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言したら、隣の席の隠れ美少女から告白された ~自分らしく生きることにしたら、なぜか隣の席の隠れ美少女から告白された~

 

 さて「大切なことは目に見えない」、「大切なものは失って初めて気づく」と誰かが言った。それは間違ってはいないのかもしれない。では一体何が大切なのか。それは勿論、失わないようにすることであろう。ではそのためにはどうすればよいのか。簡単な事である。傷つけてはいけない。傷つけないようにしなければならないのである。

 

 

「―――わかった、じゃあもう別れよう」

 

しかしここに、そんな簡単な事も分かっていない女の子が一人。幼馴染であり恋人でもある後輩、花火にちょっとここで書くのも憚られるくらいには酷い目に遭わされていた少年、颯馬。酷い目に遭わされながらも、切れなかったその気持ち。だがその呪いのような気持ちはある日、限界を超えてふつりと途切れ。まるで目が覚めたとでも言うかのように、颯馬は花火に別れを告げる。

 

 もう、あの悪魔みたいな少女に縛られる必要もない。まずは暖簾のようだった髪を切る事を思い立ち、行動してみて。その一歩が全てを好転させる鍵となる。

 

実はイケメンであると言う事がバレ、更には花火によって制限されていた周囲との交流が始まり、彼の性格の良さが周りへと知られ。更には差し迫っていた体育祭でクラス対抗リレーのアンカーとして、陸上部のイケメンであり花火の現彼氏、桐ケ谷を負かした事で、クラスの中心人物へとあっという間になっていく。

 

「チャンスをもらえるなら私は幸せだよ」

 

そんな彼へと、声を掛けてくる少女が一人。それは隣の席の級友である史(表紙)。颯馬が周りから注目を受ける前から、何気ない彼の良さを見ていた彼女はおずおずと、颯馬に声を掛け。仄かに彼女との距離が近づいていく中、何気ない時間を積み重ねる中で彼女の事が気になっていく。今まで花火しか知らなかった、そんな女性像が塗り替えられていく。自然体でいられる、そんな関係が心地よくなっていく。

 

それは正に恋の萌芽、新たな恋の始まりである。だがそれを黙ってみているだけの花火ではなく。史にいじめの冤罪をかけたり、更には颯馬の評判を貶めようとしたりと様々な策を仕掛けてくる。

 

そんな全てを、奔走して跳ね除けて。林間学校にまで押しかけてきた花火の手の者に捕らえられるも一瞬の隙を突き脱出し。だが滑落した花火を放っておけず、颯馬は隣にいる事を選ぶ。

 

「俺が幸せだった日は一日だってなかった」

 

 だが、真っ直ぐに告げるのは拒絶の言葉。真っ直ぐに傷つけられていた彼の本心を聞き、花火はようやく悟る。自分の思いは只の独占欲であり、彼を苦しめていただけだったという事を。

 

「雪代さんのおかげで本当に救われたんだ」

 

ようやく本当の意味で呪縛を振り切り、颯馬は史と共に歩きだす。ようやく知れた、恋の温かさと共に。

 

ざまぁものとして王道な面白さのあるこの作品。爽快さを味わいたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

幼馴染彼女のモラハラがひどいんで絶縁宣言してやった ~自分らしく生きることにしたら、なぜか隣の席の隠れ美少女から告白された~ (ダッシュエックス文庫) | 斧名田 マニマニ, U35 |本 | 通販 | Amazon