読書感想:パラダイスシフト1 ある意味楽園に迷い込んだようです

 

 さて、ラノベのジャンルとして異世界転移と言うのは既に王道のジャンルの一つであると言うのは画面の前の読者の皆様はご存じであろう。ではここでふと私は思う次第であるのだが、並行世界に転移するのも、異世界転移の内に入るのだろうか? ガチな異世界とは違って、並行世界と言うのは大体大元の世界観は変わらない、という事が多い。だから逆に転移するのなら、並行世界の方がまだいいのだろうか。

 

 

 

しかし、大元が同じであっても、並行世界と言うのは細かいところが違うものであり、物語にするのなら、その細かい違いが重要となってくる事が多い。この作品もまた、そんな作品なのである。

 

「調子も何も、色々困ってるんだよこっちも」

 

祖父母に育てられるも、高校入学の辺りで祖父母が亡くなり天涯孤独となった青年、ユウキ(表紙左)。大学受験を見据え始めるある日、唐突にまるでゲームの戦術を問われるような意味の分からぬ授業が目の前で繰り広げられ。自身の趣味であるゲーム知識を生かして答えるも、そのまま来たのは戦闘術の授業。全く活躍する事が出来ず、更に行きつけのゲーセンだった筈の場所は、謎の訓練施設になっていて。

 

一先ず勤勉な学生の様に調べてみれば、判明するのは今いる世界はどうも並行世界らしいという事。約半世紀前に異世界グランディア、という世界と繋がり、異世界人との交流及び魔力の流入が始まった事で、ゲームや漫画等のサブカルが発生しなかった世界。変わらぬゲーム脳で楽しむ事を決める中、担任の勧めで友人であるサトミと共に参加した「召喚実験」で、全てが動き出す。

 

神獣の雛を呼び出したサトミ、対しユウキの呼びかけに答え来たのは、何とグランディアの過去の偉人、二千年前に死した高名なエルフの魂。肉体を得たエルフはイクシア(表紙右)と名乗り、ユウキの家族になる事となり。そして、その結果がグランディア側、更にはこの世界における一大企業グループ、秋宮グループにも注目される事になり。そのおひざ元であるシュバインリッター総合養成学園に、監視も兼ねて入学する事となる。

 

受けられるのはオーダーメイドの武器の供与等、様々な特典。しかし求められるのは力となる事、「切り札」となる事。その条件を満たしうる力を、切り札の素質を彼は秘めている。類まれなる秘めた力。未だ完全には目覚めず成長を続けている特異な力が、彼の中にはある。

 

「さぁ、ではいただきましょうか」

 

そんな彼が気付かぬ間に、新たな関係の芽や因縁の芽は芽生えていたり。だけど、それはまだ始まったばかり。今は只、イクシアとのんびりした穏やかさを。

 

大きな物語が始まっていく、王道的な面白さの香りがするこの作品。まっすぐな物語を読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

パラダイスシフト~ある意味楽園に迷い込んだようです~1 (一二三書房) | 藍敦, SilverBullet |本 | 通販 | Amazon